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文献詳細

雑誌文献

胃と腸48巻3号

2013年03月発行

文献概要

今月の主題 隆起型食道癌の特徴と鑑別診断 主題

隆起型食道腫瘍の病理診断―隆起型食道扁平上皮癌の病理学的特徴

著者: 藤田昌宏12 佐藤利宏2 木ノ下義宏3 西田靖仙3 細川正夫3 高橋宏明4

所属機関: 1名寄市立大学保健福祉学部 2PCL札幌 3恵佑会札幌病院消化器外科 4恵佑会第2病院消化器内科

ページ範囲:P.257 - P.270

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要旨 隆起性扁平上皮癌の病態を知るうえでは,表在癌の特徴を分析することが重要と考えられる.術前未治療の隆起型表在扁平上皮癌(0-I型,0-IIa型),外科的切除58例,内視鏡的切除54例を肉眼的,病理組織学的に検討した.混合型が多くみられたが,隆起部分に限局してその特徴を分析すると,0-I型では腫瘍長径が大きいほど粘膜下浸潤がみられたが,0-IIa型では腫瘍の長径とは必ずしも相関せず,0-I型,0-IIa型において腫瘍長径5mmを超えると粘膜下浸潤の可能性をみた.隆起の立ち上がり方がなだらかであるものは粘膜下浸潤の可能性が高いことが知られており,筆者らの成績からも同様のことが言えると考えられたが,0-IIa型ではなだらかな立ち上がりは少なく,高さの低い隆起では粘膜内,粘膜下の判定は難しいものであった.腫瘍の表層への露出度が大きいものは粘膜内の腫瘍成分が多いと思われ,SM癌の比率が高い傾向が示唆された.旧分類の0-Isep型に相当する粘膜下腫瘍様発育をする特徴的な隆起病変があり,隆起表面の大半が非腫瘍性上皮で覆われ,上皮下に発育の主座があり,腫瘍浸潤は長径の拡がりと同等に全体的に粘膜下浸潤をすることが多い.この形態では特殊組織型を呈することが多いことが知られているが,最も多いのは一般の扁平上皮癌であることを再認識する必要があり,0-Isep型の位置づけは重要であると考えられる.粘膜下浸潤を来す0-I型では,多くが隆起腫瘍長径の大きさと同等範囲で粘膜下浸潤を認めたが,これは粘膜下での腫瘍増生が粘膜部分の腫瘍を持ち上げて隆起状となる考えを支持するものである.また腫瘍の表層での露出は全体ないし50%以上を認め,ほぼ全例が粘膜下浸潤は腫瘍長径の50%以上の割合を占めていた.腫瘍の表層への露出の程度や粘膜下への浸潤の広さが隆起の程度に反映していると考えられる.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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