icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸48巻8号

2013年07月発行

Coffee Break

見る 7.確証バイアス

著者: 長廻紘

ページ範囲:P.1191 - P.1191

文献概要

 ものごとには必ず反対側がある.見るとは,見られることでもある.何かを見るとき,逆に自分もその何かに見られていることがわからなければ本当に見たとは言えない.世の中は,見ると見られると両方向.見るだけ見られるだけという一方的なことはない.見るもの(自己)があれば,見られるもの(他己)がある.すなわち,見るときには相手があり,その相手は同時にこちらを見ている.「人は花を見,花は人を見る」ときのように,相手と一体になったときにのみ,本当に“見”が成立する.目の前の花を見るとき,真に花を「この花」として観るためには,花と一体にならなければ見たことにならない.自己が動くとき,他己も動く.一体になったときには花が何かを語りかけてくる.そうでなければ花を目の前にしても,夢を見ているようなものである(如夢相似).

 人は,トウンダのように自分が見たいようにしか見ない,見たいようにしか見ることができない(「胃と腸」48巻2号掲載).同じように,他者は自分が見せたいようにしか見せてくれない.人のどこを,何を,あなたは見ていますか.そのように他の人もあなたを見ていますよ.根が,太くて深い根がある人間かどうか他人は見ている.金庫だけ見ている泥棒は捕まりやすいが,金庫を見ている自分を見ている眼があるとなかなか捕まらない.天知る,地知る,人知る,われ知る.密室で何かをしても,必ず誰かに見られている.悪事千里を走る.「天網恢恢,疎にして漏らさず『老子』」.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら