文献詳細
今月の主題 食道表在癌治療の最先端
序説
文献概要
食道表在癌治療に先立ち
1966年に中山ら1),あるいは山形ら2)により,早期食道癌の最初の報告がなされ,進行癌が中心であった食道癌の領域に表在癌が加わり,食道癌の診療が大きく変わった.1970年代に色素内視鏡検査法が開発され,ヨード染色を併用すれば,容易にヨード不染帯が見つけられ,上皮内癌や粘膜癌が発見できるようになった3)4).凹凸が明瞭な粘膜下層癌は,食道造影検査で発見可能であるが,凹凸が軽微な上皮内癌や粘膜癌は色素の併用が可能な内視鏡検査でしか発見できないため,内視鏡検査によるスクリーニング検査が広く行われるようになった.
発見された粘膜癌および粘膜下層癌に対しては,外科切除が行われ,予後を左右する主たる因子はリンパ節転移であり,臓器転移には脈管侵襲も関与していることが示された.外科切除例の検討から,リンパ節転移と脈管侵襲は,癌の壁深達度と相関しており,粘膜癌はリンパ節転移がまれで,脈管侵襲も少ないのに対し,粘膜下層癌ではリンパ節転移を30~50%に認め,脈管侵襲はほぼ必発であった.
1966年に中山ら1),あるいは山形ら2)により,早期食道癌の最初の報告がなされ,進行癌が中心であった食道癌の領域に表在癌が加わり,食道癌の診療が大きく変わった.1970年代に色素内視鏡検査法が開発され,ヨード染色を併用すれば,容易にヨード不染帯が見つけられ,上皮内癌や粘膜癌が発見できるようになった3)4).凹凸が明瞭な粘膜下層癌は,食道造影検査で発見可能であるが,凹凸が軽微な上皮内癌や粘膜癌は色素の併用が可能な内視鏡検査でしか発見できないため,内視鏡検査によるスクリーニング検査が広く行われるようになった.
発見された粘膜癌および粘膜下層癌に対しては,外科切除が行われ,予後を左右する主たる因子はリンパ節転移であり,臓器転移には脈管侵襲も関与していることが示された.外科切除例の検討から,リンパ節転移と脈管侵襲は,癌の壁深達度と相関しており,粘膜癌はリンパ節転移がまれで,脈管侵襲も少ないのに対し,粘膜下層癌ではリンパ節転移を30~50%に認め,脈管侵襲はほぼ必発であった.
参考文献
1)中山恒明,羽生富士夫,岩塚迪雄,他.食道早期癌の一例.外科診療 8 : 1224-1226, 1966
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3)Toriie S, Kohli Y, Akasaka Y, et al. New trial for endoscopical observation of esophagus by dye scattering method. Endoscopy 7 : 75-79, 1975
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5)門馬久美子,榊信広,吉田操.食道粘膜癌の内視鏡的治療─内視鏡的粘膜切除(mucosectomy)を中心に.消内視鏡 2 : 501-506, 1990
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9)日本食道学会(編).食道癌─診断・治療ガイドライン2012年4月版,3版.金原出版,2012
10)幕内博康,島田英雄,千野修,他.食道m3・sm1癌の治療成績─EMRと手術の長期予後.胃と腸 37 : 53-63, 2002
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12)大木岳志,大和雅之,太田正穂,他.口腔粘膜上皮細胞シート移植術による食道再生医療の臨床応用.日消誌 42 : 1032, 2009
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