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文献詳細

雑誌文献

胃と腸49巻1号

2014年01月発行

今月の主題 ESD時代の早期胃癌深達度診断

主題

ESD時代の早期胃癌深達度診断におけるX線検査の役割

著者: 島岡俊治1 松田彰郎1 仁王辰幸1 飯福沙織1 馬場由紀子1 社本多恵1 豊田真理1 岩木宏介1 西俣伸亮1 政幸一郎1 田代光太郎1 新原亨1 西俣嘉人1 堀雅英1 西俣寛人1 田中貞夫2

所属機関: 1鹿児島共済会南風病院消化器内科 2鹿児島共済会南風病院病理診断科

ページ範囲:P.22 - P.33

文献概要

要旨 【目的】ESD時代の早期胃癌深達度診断において,X線検査の役割を明らかにする.【対象と方法】2009年1月~2012年12月の4年間に当院で手術,あるいはESDを施行した早期胃癌中,術前に精密X線検査を施行した287例287病変において,内視鏡,X線検査,EUSの深達度診断を行い,陽性的中率,陰性的中率,感度,特異度,正診率を比較した.【成績】30mm以下の分化型UL(-)の病変においては,内視鏡のみの診断で陽性的中率,陰性的中率,感度,特異度,正診率いずれも高い結果が得られ,ESDの適応を決めるに足る十分な情報を得ることが可能であった.30mm以下の分化型UL(+)の病変においては,内視鏡の診断能は低く,粘膜内癌を深読みしてしまう可能性が考えられたが,過伸展状態での観察や圧迫法を用いたX線検査を追加することによって,内視鏡の深読みを減らす上乗せ効果が期待できる.31mm以上のUL(-)例における内視鏡の陽性的中率,陰性的中率,感度,特異度,正診率は,いずれも30mm以下を下まわっていたが,X線検査によって上乗せ効果が得られた.20mm以下でUL(-)の未分化型癌においては,内視鏡による診断能が高く,X線検査による上乗せ効果はみられなかった.X線圧迫像を用いることができない胃上部の病変において,EUSは有用であった.【結論】ESDの適応外病変に対する過剰なESDを避けるために,内視鏡での深達度診断が困難な大きな病変に対するX線検査は有用である.また,UL(+)例において,内視鏡やEUSでの深読みを補正し,過剰な外科手術を避けるためにもX線検査は有用である.ESD時代においても,内視鏡,X線検査,EUSを病変に応じて相補的に用いることにより,治療方針を決定するために過不足のない情報を得ることが重要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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