胃と腸49巻1号

2014年01月発行

早期胃癌研究会症例

粘膜下腫瘍様の形態を呈した早期胃癌（粘膜内癌）の1例

著者： 平嶋勇人¹ 中道太郎¹ 北沢尚子² 千葉宙門² 宇賀治良平² 岩尾年康² 日下部崇³ 尾割道代⁴ 中島寛隆⁴ 長浜隆司⁴

所属機関： ¹医療法人中山会宇都宮記念病院消化器内科 ²会津中央病院消化器病センター ³会津中央病院病理部 ⁴早期胃癌検診協会

ページ範囲：P.110 - P.117

要旨　患者は70歳代，男性．他院のスクリーニング上部内視鏡検査にて異常の指摘を受け，当科へ紹介され，受診となった．上部消化管X線造影および内視鏡検査にて，胃体上部後壁大彎に中心陥凹を伴う粘膜下腫瘍様病変が認められ，2度目の生検にて乳頭腺癌と診断された．超音波内視鏡検査でSM浸潤癌と診断し，噴門側胃切除術を施行した．切除標本で隆起病変の大きさは15×15mm，中心部には明瞭な陥凹を認めた．最終的な病理組織学的所見は，pap，M，ly0，v0，n0であった．粘膜筋板が偽憩室様に粘膜下層へ内反・菲薄化した形態を呈しながら，腫瘍を取り囲むように確認された．その発育進展形式は示唆に富む症例であると考えられたので，ここに報告する．

参考文献

1）福山隆之，平岡哲郎，蜂谷勉，他．粘膜下腫瘍様形態を呈した胃癌─内視鏡的検討を中心に．消化器科 8 : 158-170, 1988

2）西野隆義，光永篤，中尾京子，他．胃膠様腺癌の臨床病理学的ならびに内視鏡的検討．Prog Dig Endosc 36 : 213-217, 1990

3）武本憲重，馬場保昌，加来幸生，他．粘膜下腫瘍の形態を示した胃癌のX線診断．胃と腸 30 : 759-768, 1995

4）河田佳代子，石黒信吾，辻直子，他．粘膜下腫瘍様形態を示す胃癌の臨床病理学的特徴．胃と腸 30 : 739-746, 1995

5）小山洋，小山登，伊藤晴夫，他．粘膜下腫瘍と臨床的に診断された小さな胃癌の1例．胃と腸 30 : 819-822, 1995

6）西中秀和，児玉和彦，岩村道憲，他．胃壁内の異所性胃腺より発生した胃癌の1例．胃と腸 38 : 1562-1566, 2003

7）福田直子，小田修治，辻上孝司，他．粘膜下腫瘍様の形態を呈し，粘膜下異所性腺管からの発生が示唆された早期胃癌の1例．Gastroenterol Endosc 49 : 2498-2503, 2007

8）山際裕史，松崎修，石原明徳，他．胃粘膜下異所性胃腺の意義．医のあゆみ 104 : 577-578, 1978

9）米村豊，大山繁和，上田順彦，他．多発性胃粘膜下囊腫．とくにその組織発生と胃癌との関連性．癌の臨 31 : 162-167, 1985

10）Palmer ED : Benign intramural tumors of the stomach : a review with special reference to gross pathology. Medicine（Baltimore） 30 : 81-181, 1951

11）岩永剛，古河洋，石黒信吾．胃粘膜下びまん性異所腺の102例の検討による胃癌発生機序に関する研究．最新医 41 : 2418-2426, 1986

12）原忠之，蓮井宏樹，森口正人，他．孤立性胃粘膜下異所腺に発生した早期胃癌の1例．胃と腸 29 : 1089-1093, 1994

13）中村恭一．胃癌の構造．医学書院，1983

14）岩下明徳，川元健二，渕上忠彦，他．胃底腺領域の陥凹型早期癌に関する病理組織学的検索─分化型癌と未分化型癌の比較．胃と腸 22 : 1047-1059, 1987