colitic cancer遡及例の全国アンケート調査
潰瘍性大腸炎に伴うcolitic cancerの発育進展―遡及例からみた初期病変推定とその形態変化
著者:
松井敏幸
,
山崎一朋
,
久部高司
,
青見賢明
,
諸隈強
,
矢野豊
,
高木靖寛
,
平井郁仁
,
岩下明德
,
岩男泰
,
松本主之
,
大井秀久
,
安藤朗
,
江崎幹宏
,
青柳邦彦
,
杉田昭
,
仲瀬裕志
,
藤谷幹浩
,
田中信治
,
清水誠治
,
国崎玲子
,
飯塚文瑛
,
春間賢
ページ範囲:P.1517 - P.1532
要旨 全国アンケート調査により潰瘍性大腸炎(UC)に伴う大腸癌の初期病変形態を推定し,その進展と形態変化ならびに発育速度を推定することを目的とした.対象は,初期病変が内視鏡撮影され,最終的に切除され病理学的検査が十分に行われた54病変49例で,腫瘍発見時年齢は平均50.5歳,罹病期間平均15.9年.病変部位はS状結腸と直腸に43病変(79.6%).初回病変の内訳は,内視鏡的に腫瘍と認識可能な22病変(40.7%)では,隆起18病変(IIa 12,IIa+IIc 2,Is 3,Is+IIb 1)と陥凹(IIc 3,IIc+IIb 1)4病変(18.2%)より成り,腫瘍と認識不可能な32病変(59.3%)では,活動期粘膜20病変と寛解期粘膜12病変であった.最終的に進行癌であったものが19病変(観察期間32.8か月)で,最終的に早期癌(あるいはdysplasia)35病変(観察期間38.6か月)に分けられた.最終病変は隆起39病変,平坦・陥凹5病変と狭窄10病変であった.進行癌の発育形式は,管腔狭窄(42.1%)や隆起が増大(100%)することが多かった.早期癌の発育形式は,隆起増大ないし隆起形成例が68.6%を占めた.初回病変が3年以内に進行癌となった急速発育例が進行癌の68.4%(13/19)を占め,全癌では24.1%であった.結論としてUCに伴う癌の初期像は約3年前の検査で40%が認識されえたが,60%は炎症粘膜と判定されていた.早期の腫瘍発見には,炎症粘膜からの積極的な生検が必要であり,腫瘍が比較的短時間に発育することも念頭に置いたサーベイランス策定が望まれる.