胃癌ESD後の局所遺残再発例,転移再発例の臨床病理学的特徴と経過・予後—多施設共同研究
著者:
田辺聡
,
石戸謙次
,
松本主之
,
小坂崇
,
小田一郎
,
鈴木晴久
,
藤崎順子
,
小野裕之
,
川田登
,
小山恒男
,
高橋亜紀子
,
土山寿志
,
小林正明
,
上堂文也
,
濱田健太
,
豊永高史
,
河原史明
,
田中信治
,
吉福良公
ページ範囲:P.1601 - P.1608
要旨 2003年1月から2010年12月までの間に,対象施設でESDが施行された早期胃癌症例は,ガイドライン適応病変6,456症例,7,979病変,適応拡大病変4,202症例,5,781病変であった.このうち,2014年3月31日の時点で局所遺残再発あるいは転移再発を来した症例について臨床病理学的特徴,経過と予後について検討を行った.局所遺残再発は,ガイドライン適応病変では14例(0.22%),適応拡大病変では53症例(1.26%)であり,有意に適応拡大病変で局所遺残再発が高率であった(p<0.05).ガイドライン適応病変では,胃体部の平坦・陥凹型が多く,適応拡大病変では部位による差はなく,平坦・陥凹型が多く未分化型混在癌が9例(17%)含まれていた.非治癒切除は,ガイドライン適応病変9例(64%),適応拡大病変40例(75%)であり,適応拡大病変で非治癒切除の割合が高かった.局所遺残再発例に対する追加治療は,内視鏡治療,外科治療はそれぞれ,ガイドライン適応病変では12例,1例,適応拡大病変では46例,5例といずれも9割の症例で内視鏡治療が選択されていた.また,内視鏡治療のほとんどの症例でESDが施行されていた.転移再発はガイドライン適応病変にはなく,適応拡大病変6例(0.14%)にみられた(p<0.05).深達度はMとSM1がそれぞれ3例ずつで,腫瘍径は55mmの1例を除いて21mm以下の病変であった.組織型では未分化型混在癌(分化型優位)が半数を占め,全例治癒切除の判定であった.非常に低率ではあるが,適応拡大病変については転移再発を考慮した術前の説明と経過観察が重要であり,未分化型混在癌の取扱いが今後の課題である.