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文献詳細

雑誌文献

胃と腸49巻13号

2014年12月発行

文献概要

今月の主題 胃の腺腫─診断と治療方針 序説

胃腺腫とは

著者: 岩下明德1

所属機関: 1福岡大学筑紫病院病理部

ページ範囲:P.1803 - P.1805

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胃腺腫の本態と歴史的名称

 胃腺腫は上皮性の良性腫瘍と定義され,組織学的に腸型と胃型腺腫に分類されている.さらに前者を扁平腺腫(小腸型)と大腸型腺腫に,後者を腺窩上皮型と幽門腺型に亜分類する人もいる.しかし,この本態が明らかになるには多くの先達の血のにじむような努力を必要としたのは言うまでもない.

 今日の腸型腺腫に相当する胃病変を本邦で最初に報告したのは山極(1905年)で,外国ではKonjetzny(1928年)と言われている.しかし,本邦において胃腺腫の組織像や本態,名称が多く議論されはじめたのは1960年代からである.1962年に松本ら1)は剖検例の胃にみられた異型性増殖による平盤状隆起を報告し,同時期に中村(卓)ら2)が同様の病変をIII型ポリープ(扁平腺腫)と分類し,同時にIV型ポリープ(大腸型腺腫)を提唱した.また同様の病変に対し1966年にはNakamuraら3)が異型上皮巣(ATP),1967年に福地ら4)がIIa-subtype,そして1968年に佐野ら5)が扁平ポリープ,長与が境界領域病変などと呼称し,臨床的,病理学的特徴を詳細に検討し報告した.熱心な研究者らが症例数の積み重ねと詳細な検討を行っていたこの時代に,それらの組織像は,良性と悪性のいずれとも診断しがたい境界領域の病変や,癌とは言えない異型組織などと認識されていた.すなわち,腺腫のほかに非腫瘍性の幼若上皮や低異型度の癌が含まれている可能性があった.

参考文献

1)松本道也.消化器の前癌状態.老年病 6 : 158-164, 1962
2)中村卓次.胃ポリープの病理分類.日外会誌 63 : 949-951, 1962
3)Nakamura K, Sugano H, Takagi K, et al. Histopathological study on early carcinoma of the stomach : criteria for diagnosis of atypical epithelium. Gan 57 : 613-620, 1966
4)福地創太郎,望月孝規.胃隆起性病変の診断におけるFGS生検の意義.Gastroenterol Endoscopy 9 : 105, 1967
5)佐野量造.胃腺腫性ポリープの分類とその癌化について.胃と腸 3 : 725-728, 1968
6)Watanabe H. Argentaffin cells in adenoma of the stomach. Cancer 30 : 1267-1274, 1972
7)日本胃癌学会(編).胃癌取扱い規約,14版.金原出版,2010
8)Nakamura K, Sakaguchi H, Enjoji M. Depressed adenoma of the stomach. Cancer 62 : 2197-2202, 1988
9)Schlemper RJ, Kato Y, Stolte M. Well-differentiated adenocarcinoma or dysplasia of the gastric epithelium : rationale for a new classification system. Verh Dtsch Ges Pathol 83 : 62-70, 1999
10)渕上忠彦,岩下明德.胃隆起性病変(Group III病変)の経過.胃と腸 25 : 911-926, 1990
11)八尾隆史,大屋正文,中村俊彦,他.胃腺腫の悪性化の危険因子─特に肉眼形態,組織像および形質発現との関連.胃と腸 38 : 1367-1375, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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