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文献詳細

雑誌文献

胃と腸49巻8号

2014年07月発行

文献概要

今月の主題 表面型表層拡大型食道癌の診断と治療戦略 主題

表面型表層拡大型食道癌の病理学的特徴

著者: 堀口慎一郎1 門馬久美子2 高橋雅恵1 山田倫1 佐野直樹1 藤原純子2 加藤剛3 三浦昭順3 出江洋介3 比島恒和1

所属機関: 1がん・感染症センター都立駒込病院病理科 2がん・感染症センター都立駒込病院内視鏡科 3がん・感染症センター都立駒込病院食道外科

ページ範囲:P.1131 - P.1140

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要旨 表面型表層拡大型食道癌は,“目立った隆起や陥凹がなく,長軸方向に5cm以上の拡がりを示す0-II型の表在癌”と定義される.この定義にかなった単純型の表面型表層拡大型食道癌21例を深達度別にpT1a-EP~LPMのA群8例とpT1a-MM~pT1b-SM3のB群13例に分けて,また比較検討群として一部に0-I型や0-III型の成分を伴う混合型のC群5例を臨床病理学的に検討した.混合型のC群では5例全てに0-I型や0-III型の局面で深達度MM~SM浸潤を伴い,脈管侵襲やリンパ節転移が高率で,他群とは明らかに区別すべき群であると考えられた.EP~LPMにとどまるA群とMM~SM浸潤のあるB群との鑑別ポイントが重要となるが,各群の0-II型局面では病理学的な特徴において相同性が高く,この部分での差異は捉えづらい.さまざまなバリエーションが存在するが,網目状形態(腫瘍内ヨード染色域)がA群4例(50%):B群13例(100%)とB群に有意に存在した(p=0.0011).背景のまだら食道はA群6例(75.0%):B群6例(46.2%)でA群における割合が高い傾向にあった.B群における浸潤部の特徴は,平均2.6か所以上の多中心性浸潤部で,その局在は中心部からややずれて散在し,最大浸潤幅は0.2~11.0mmと比較的狭いなどの傾向がみられ,multifocalな病態形成が窺われた.表層分化を保ったままでの粘膜下への浸潤様式が目立ち,一部では導管内進展成分の介在もみられることから,表面構造の観察にて深達度を診断する内視鏡診断には限界があると考える.

参考文献

1)日本食道学会(編).食道癌取扱い規約,10版補訂版.金原出版,2008
2)板橋正幸.表層拡大型.下里幸雄,井手博子,板橋正幸(編).取扱い規約に沿った腫瘍鑑別診断アトラス─食道.文光堂,pp 73-75,1994
3)川村徹,滝澤登一郎,船田信顕,他.表層拡大型食道表在癌の病理.胃と腸 30 : 1033-1039, 1995
4)吉田操.表層拡大型食道表在癌.胃と腸 30 : 983-984, 1995
5)幕内博康,町村貴郎,島田英雄,他.表層拡大型食道表在癌の内視鏡診断─診断のコツと発育過程への考察.胃と腸 30 : 1021-1032, 1995
6)松本克彦,内田雄三.アンケート調査からみた表層拡大型食道表在癌の実態─第31回食道色素研究会集計報告.胃と腸 30 : 1041-1048, 1995
7)Tamura H, Sugihara H, Bamba M, et al.Clonal analysis of esophageal squamous cell carcinoma with intraepithelial component. Pathology 69 : 289-296, 2012
8)Mel G, Carlo CM.Clonal evolution in cancer. Nature 481 : 306-313, 2012
9)竹内学,橋本哲,小林正明,他.病変の形態からみた発育進展─初期病巣から粘膜癌までを中心に : 表層拡大癌の発育進展.胃と腸 47 : 1410-1417, 2012
10)門馬久美子,藤原純子,加藤剛,他.微小癌あるいは小癌からの発育進展.胃と腸 47 : 1393-1409, 2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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