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文献詳細

雑誌文献

胃と腸49巻9号

2014年08月発行

文献概要

今月の主題 小腸潰瘍の鑑別診断 主題症例

治療前後の小腸病変を形態学的に詳細に評価しえたサイトメガロウイルス腸炎の1例

著者: 大門裕貴1 土居雅宗1 二宮風夫1 矢野豊1 平井郁仁1 松井敏幸1 池田圭祐2 岩下明德2

所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器内科 2福岡大学筑紫病院病理部

ページ範囲:P.1347 - P.1354

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要旨 患者は70歳代,女性.高血圧,糖尿病の診断で近医に通院中であった.下痢,腹痛の出現の後,意識障害も認めたため当院へ緊急入院となった.感染性腸炎を契機とした高血糖,糖尿病性昏睡と診断し,インスリン療法,抗菌薬にて加療を行った.しかし,腹痛,下痢は持続したため精査を行ったところ,下部消化管内視鏡検査にて,盲腸とS状結腸に巨大な潰瘍を認めた.サイトメガロウイルス(CMV)antigenemia陽性で,大腸潰瘍からの生検でもCMVの存在が確認され,CMV腸炎と診断した.他臓器検索目的で,小腸X線造影検査を行ったところ,小腸にも多発潰瘍を認め,その後に行ったカプセル内視鏡検査,ダブルバルーン内視鏡検査では全周性,帯状,輪状と多彩な形態を呈した潰瘍がほぼ全小腸に多発していた.ガンシクロビル投与にて,穿孔などの重篤な合併症なく,症状は改善した.CMV腸炎の小腸病変を詳細に画像評価しえた報告はまれであり,貴重な症例と考え報告した.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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