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今月の主題 胃癌の経過 綜説
病理組織学的にみた早期胃癌から進行癌への進展
著者: 北岡久三1
所属機関: 1国立がんセンター病院外科
ページ範囲:P.15 - P.23
文献購入ページに移動胃癌の発生が,特殊なものを除けば,粘膜内で行なわれることは議論の余地がない(Konjetzny8),村上12)14)).さて,これらの癌がいかなる経過を辿って,早期胃癌さらに進行癌へと進展するかについて,これまであまり考察されていない.
癌の浸潤が粘膜内にとどまっているものは,それが拡大してゆくものか,それとも拡大せず深部浸潤してゆくものか,この段階では判定できない.いずれにしろ,粘膜内に浸潤している癌が悪性度を具備し,他領域に侵入,つまり異所性発育を開始することは確かである.さらに遠隔転移を形成し進行癌としての性格を発揮するようになる.
そこで,筆者らは,胃癌の進展は,癌細胞が粘膜筋板を破って,粘膜下層に浸潤したときの態度一粘膜下層浸潤の拡がりおよび管内浸潤(リンパ管内,血管内浸潤)の程度一により決定されるであろうと想定し,粘膜下浸潤形式7)なるものを発表した.この形式が胃癌の深達度と予後に密接なる関係のあることが分った.
ここでは,胃癌を病理組織学的に,潰瘍先行や癌先行説にとらわれずに,潰瘍合併群と非合併群(主として隆起型)に分類した.この両群において,前者を潰瘍の深さにより,後者を粘膜筋板の挙上の態度により,同一肉眼形態を示す癌について,それぞれ分類した,これらの占める比率が,早期胃癌と進行癌において,いかなる肉眼形態を示すものに,一致するか否かを比較検討した.
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