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文献詳細

雑誌文献

胃と腸5巻10号

1970年09月発行

文献概要

今月の主題 胃を除く消化器の早期癌(1) 総説

膵臓の早期癌

著者: 石井兼央1

所属機関: 1国立がんセンター内科

ページ範囲:P.1225 - P.1232

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はじめに

 消化器系の癌のなかでも,膵臓癌は診断,治療がもっとも困難をきわめる臓器癌の1つであり,現在の時点でその早期癌を論ずるのは時期早尚であるとのそしりをまぬがれないかもしれない.しかし,膨大部領域癌(以下には膨大部癌とよぶ)を含める広義の膵頭部癌―この部位の癌が表1にしめすように,膵臓癌の約70%をしめる1)―に対しては根治手術である膵頭十二指腸切除術が確立,普遍化しているので,早期診断が可能でさえあれば,膵臓癌の半数以上において術後の長期生存が望みうるであろうし,また,最近の10年間に膵臓癌診断のための積極的な検査法がつぎつぎに登場するという進歩があって膵臓癌の早期診断の可能性にも希望がもてはじめてきたことなどの理由から,現段階における膵臓癌の早期像の把握と早期診断へのアプローチを試みることは無意味ではないであろうと思う.膵臓は薄い被膜でおおわれた実質臓器であり,筋層を有する管腔臓器の胃・腸とは局所解剖学的に異なっているので,膵臓の早期癌については早期胃癌のような組織学的定義を適用することはできない.また,膵臓はリンパ系の豊富な臓器であるが,そのリンパ系は複雑多岐であって体系がまだ十分には明確でないので,膵臓の早期癌を組織学的に規定するためにはさらに今後の基礎的検討が必要であろう.

 したがって,この論文では多くの施設の御協力によって調査しえた,1)膵頭十二指腸切除術後の長期生存例,2)早期と考えられる膵臓癌の剖検例3)臨床的に比較的早期と思われる膵臓癌の症例について膵臓癌の早期像をまとめ,ついで比較的新らしい診断技術の診断意義にふれることとした.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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