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文献詳細

雑誌文献

胃と腸5巻2号

1970年02月発行

今月の主題 線状潰瘍

綜説

線状潰瘍をめぐる2・3の問題

著者: 川井啓市1

所属機関: 1京都府立医科大学増田内科

ページ範囲:P.159 - P.167

文献概要

はじめに

 いわゆる線状潰瘍の概念を,臨床的な問題としてとりあげたのは,村上ら1)2)3)の業績による.その詳細な病理組織学的な検索を基礎にした考察と臨床病像の解析から今まで円形潰瘍としてしか意識しなかった胃潰瘍のなかで,線状潰瘍が,けっして特殊型としてみられるほど稀なものではないことを強調した.ついで白壁ら4)5)は二重造影法を導入したX線検査によって,よく術前に線状潰瘍を確診しうることを強調するにおよんで,本疾患は俄に消化器病にたずさわる臨床家の興味をひくに至ったのである.その後,本邦におけるルーチン・ワークとしての胃カメラ検査の応用は,本症診断へのアプローチを一層容易にしてくれた.しかし,この線状潰瘍のような特殊型の胃潰瘍の存在は,すでに1926年Hauser6)が,線状瘢痕としてHenke-Lubarschに記録を残しているし,また彼の記載によれば,Grtinfeldも120例中20例に線状瘢痕を観察したといっている.他方,内視鏡的にもGutzeit&Teitge7)は,著書の「Gastroskopie」にlineare Narbeとして胃鏡模写図を示している.いまだ臨床的な興味をもつに至っていなかったとはいえ,その精密な観察眼には驚うかざるをえない.

 その後X線的診断9)10)ないし内視鏡診断8)11)~14)については,数多くの報告がなされ,一応その臨床像,X線診断ないし内視鏡もほぼ確立されるに至ったが,最近,小彎に直交する線状潰瘍の他にも,X線的に変形のみられない線状を示す潰瘍の幾つかの型が報告され,勢い,本症の概念をある程度整理しないと混乱を招くおそれが出て来た.

 本文では,最近の本症をめぐる内視鏡診断,成因などの2,3の問題点について文献を参考にしながら筆者の考え方をまとめてみた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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