icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸5巻2号

1970年02月発行

文献概要

技術解説

陥凹性病変の生検手技

著者: 田中弘道1

所属機関: 1烏取大学医学部第2内科

ページ範囲:P.235 - P.237

文献購入ページに移動
はじめに

 直視下生検法は病変を正確に観察することが出発点であり,同時にそのことが生検診断の価値を左右する最大の要因でもあることは語りつくされており,したがって極端に言えば生検を行なう場合に特別な手技手法が存在するわけではない.直視下で病変を正確に観察することが可能であれば生検は容易であるといえる.

 さて,病変を正確に観察するとは具体的にはいかなることであろうか?筆者は少なくとも下記の条件を満たすことであると考えている.

 1)観察方向:観察軸に任意性をもった観察,すなわち,直視下にとらえた病変を正面方向,斜方向など任意の方向から観察可能な条件下て把握すること.

 2)観察距離の任意選択性1スコープの方向調節,患者の体位変換あるいはスコープの関節,パンニング機構の操作により,近距離観察から遠距離観察までが任意に選択可能である観察.

 3)視野の明るさを調節可能であること.

 以上のように考えると,一部機械的条件は別としても,直視下で病変が観察可能であるということと,十分正確な観察ということの間には大きな隔りが存在するのである.スコープの改良によって胃内くまなく観察可能となってきた昨今ではあるが,果して胃内各部の病変の全てが上述したような正確さで観察が可能なのであろうか.この点から考えれば,噴門宥窪部,胃体高位後壁および幽門輪近辺は不十分な観察でしかあり得ないことが理解されるはずである.例えば,噴門部病変でも反転観察に引続いて直視下生検は十分に可能ではあるが,観察方向,観察距離の調整は現在の最新のスコープを用いても不十分であり,したがって,十分正確な生検診断,少なくとも本稿で述べるような生検法には程遠いことが理解いただけると思う.したがって,現段階では十分詳細な胃生検診断が可能な領域の病変と,いま一つには,生検は可能ではあるが狙撃能の面において不十分な部位とが存在することを,前もって理解しておくことか必要であろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?