文献詳細
文献概要
今月の主題 胃肉腫 綜説
胃肉腫の細胞診
著者: 信田重光1 沢田好明1 安井昭1 高村達1 百々章一1 松沢良和1 池口祥一1 早矢仕治邦1 嶋田正幸1
所属機関: 1順天堂大学医学部外科
ページ範囲:P.301 - P.310
文献購入ページに移動胃疾患診断学が著しい進歩をみせ,種々の疾患の鑑別診断がかなり正確に行なえるようになって来ている現在において,なお診断が比較的難しいとされているものの一つに,胃肉腫がある.これは,その発生頻度が,胃癌腫に比べて0.5~3%(Palmer1),Gtitgeman2),Balfour3),梶谷4),山形5))とかなり低いために,多数の症例を集めて,その診断学的事項を検討するという機会が少ないためと考えられるが,現在でもなお,X線内視鏡的診断法では,胃癌との鑑別は特有な場合を除いては,困難とされている.
昭和33年に,筆者の1人信田が津田6)と共に,細胞診(Abrasive Balloon法)により診断可能であった胃細網肉腫の1例を報告したが,これが幸いにも,この分野の診断可能例の第1例となった.その後,阪7),山田8)9),山形10),綿貫11),信田,津田12)らにより,それぞれ細胞学的に診断可能であった胃肉腫,特に胃悪性淋巴腫症例が報告されて,この分野の腫瘍の胃癌との鑑別には,細胞診が重要視されるようになって来た.信田12'は既に自験例5例を,その細胞学的所見をまとめて発表してあるので,本稿では,その後経験した2例の胃悪性淋巴腫症例と,1例の胃平滑筋肉腫症例の細胞像を述べ,また,この分野の診断における直視下生検の意義についても触れたい.
掲載誌情報