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文献詳細

雑誌文献

胃と腸5巻4号

1970年04月発行

文献概要

今月の主題 胆のう胆道疾患診断法の最近の進歩 綜説

経皮的胆道造影法

著者: 窪田博吉1

所属機関: 1千葉大学医学部第1外科

ページ範囲:P.423 - P.431

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はじめに

 始めに胆道のX線診断はどうあるべきかという問題を提起したい.筆者の見る所では,胆道のX線診断の現況は胃のそれと比較して甚だ見劣りするようである.その落差は日常シヤウカステンの前に歴然と見られる.片や胃粘膜の僅かな隆起や陥凹が明瞭に出ている写真を前にして,小さな斑点や細かい線の交錯の持つ意義が解読されているのに対して,こちらは,これが胆囊の影であろうか,これは胆管であろうかというような議論に熱中している.これではその差は拡がるだけであろう.

 その上悪いことに,経口法とその変法,経静脈法とその変法,さらに経皮的造影法というように幾つかの手段があって,それぞれに長所短所があるにも拘らず,そのうちの一つしか使わないという風潮がある,経口法の信奉者は経静脈法の副作用を恐れてビリグラフィンを注射しようとしない.経静脈法を駆使する人々も経皮的造影に進もうとしない.したがって,経静脈法ですべてを解決しようとして,シヤウカステンの前でああでもないこうでもないという仕儀となる.これが誰の眼にも見える点や線を議論する立場との問にある落差であると思う.X線診断というものは明瞭に見えている点や線―この場合医学的知識がなくても―これらの点や線が見えるか見えないかという判断を基準にして成立するという考え方に立っての話である.胃のX線診断はまきにこのレベルで行なわれている.したがって胃のX線診断のレベルに早く追いつきたいならば,まず誰にでも見える影を出すことが第1歩であろう.

 だからといって筆者は,経口法や経静脈法がだめだといっているわけではない.経口法で明瞭な像が出る場合のあることを否定するのでもないし,経静脈法で明瞭に所見を出すことができる範囲のあることも知っている.問題は,その能力を超えてしま一,ている場合に無理をすることである.経口法で影が淡くて読影に困難を感じたり,経静脈法でも良い像が出ていなかったら,そしてそれ以上のことをしたくないならば,その患者の診断についての権利をもっと良く現わせるものに譲るべきだと思う.筆者は経口法も経静脈法も経皮的造影も十分使いこなしているつもりである.そして,経皮的造影が先に述べた胃の診断に匹敵できる誰一の方法であると考えている.

 最初にこういう問題を提起し,それについての批判は待つとして本論に入る.本来ならば歴史的な考察から出発して,方法,成績と進むのが筋道であるが,最近本法の手技の細部について質問を受けるし,また今まで書いたものでは1),これらの要求に応えていないので,まず方法から述べて見る.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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