今月の主題 症例・研究 特集
研究
胃螢光洗浄細胞診
著者:
竹中正治1
谷田秀1
佐々木義夫1
綾部正大1
所属機関:
1鳥取大学医学部第1外科教室
ページ範囲:P.733 - P.738
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最近の細胞化学的染色法などの発展にともなって,もはや胃の細胞学的診断法は完成の域に達したかの感がある.また種々の細胞採取法とくに内視鏡器具の改良によって,現在では諸氏の報告をみても非常に高い診断適中率がえられている.しかしいずれの場合にも細胞の形態学的な事項が根底をなし,細胞鑑別の重要な因子となるのはいうまでもない.すなわち胃癌のみならず胃潰瘍,胃炎,ポリープなどの良性疾患の際にも著しく異型度の強い細胞が出現するのは周知のとおりである.acridine orange染色法は1924年にStruggerによって考案され,1956年Bertalanffyによって細胞学的診断法に応用されるようになった.この染色方法の特徴はacridine orange色素が細胞内の核蛋白と結合しDNAは緑色にRNAは赤色に染まるため,細胞診にもちいると悪性細胞は螢光輝度が強く良性細胞と容易に区別でき,弱拡大のscreeningも簡単である点にあるとされている.筆者らは細胞診screeningをより迅速にしかもより正確にしようと試み,細胞採取と同時に細胞が染色される方法(筆者らはこの方法を胃螢光洗浄細胞診と呼んでいる)を考案したが,手技も簡単で診断成績も良好,しかも経済的な方法であるのでここに報告する.