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文献詳細

雑誌文献

胃と腸5巻6号

1970年06月発行

今月の主題 症例・研究 特集

研究

動物に発生した胃Carcinoidsについて

著者: 曾我淳1 金原英雄1 田沢賢次1 平出兼雄1 小島健一2

所属機関: 1新潟大学医学部外科第1講座 2新潟大学附属病院輸血部

ページ範囲:P.757 - P.763

文献概要

 近年serotoninおよびその関連代謝産物,さらに症候学上の問題などの点でいわゆるcarcinoid tumorが漸次注目を集めつつあることは,周知のとおりである.ことにその組織発生に由来すると思われる腫瘍発生部位による組織化学的,発生病理学的,ひいては臨床病理学的な差については興味ある報告がみられている2)7)8)25).すなわち,前腸系由来の気管支・胃・上部十二指腸などに発生するcarcinoidはargyrophil細胞を主な構成成分とし,中腸系由来の小腸・虫垂などのcarcinoidはargentaffin細胞を主な構成成分とすることが多く2)7)25),flushingなどの臨床症状発現の面でもその差違が指摘されている8)25)

 筆者らの研究室で,1965年8月以来飼育中のMastomysに発生した最初の腺胃部腫瘍の組織像が人のcarcinoidに極めて類似していることは筆者らの注目をひくところであった.しかしその後に発生した数箇の腺胃部腫瘤は,明らかに悪性上皮性腫瘍の組織像を示していたが通常行なわれているargentaffin反応は常に陰性であり,一方電顕的には極めてまばらに散在する特殊な球形顆粒を見出してはいたが,組織化学上の陰性所見より結論がつかぬままに,検索をすすめていたところ,米国NIHで古くより当動物の自然発生腫瘍について,観察をつづけておられるK. C. Snellよりの私信18)でargyrophil反応を試みるよう示唆があり,その所見が電顕上の解決困難であった問題の解明に一つの前進を促す結果となった.今後,人のcarcinoidと臨床上の諸問題を解決する手がかりを得るためのモデル動物としてMastomysが大いに活用されることが期待される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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