胃と腸5巻8号

1970年07月発行

今月の主題 診断された微小胃癌

総説

微小胃癌のX線診断の可能性

著者： 西沢護¹ 伊藤俊夫¹ 野本一夫¹ 狩谷淳¹ 上野正己¹ 林学¹ 小林茂雄¹ 日暮協²

所属機関： ¹千葉大学医学部第1内科 ²千葉県対癌協会

ページ範囲：P.951 - P.959

文献概要

はじめに

　小さな胃癌を探そうとする試みはかなり前から多数の人々により追求されてきたが，ことにこの数年来，X線，内視鏡，胃生検の併用が盛んに行なわれるようになってきたため，とみに報告例が増加し，第4回内視鏡学会秋季大会（昭和41年11月）のシンポジウム微細病変の診断および診断限界¹⁾では2cm以下，第7回内視鏡学会秋季大会（昭和44年10月）のシンポジウム²⁾では1cm以下の小胃癌の診断を討論するまでに至った．

　X線診断については，白壁は大きさ，高さ，型について早期胃癌のX線診断の限界を追求してきたが，6年前にすでにⅡaは透視で2cmまではみえるといい，Ⅱcは透視でみえにくく写真診断をするようにと述べ，おおよそX線診断の限界と小胃癌に対する検査方法を言いつくしており³⁾，第3回世界消化器病学会（昭和41年9月）で⁴⁾，表面型早期癌ではⅡaは3cm，Ⅱcは4cmの大きさまでなら容易にみつけることができると報告し，また病変部位を狙った精密検査では1cm以下の表面型早期癌の写真も呈示している⁵⁾．

　その他，1cm以下の表面型早期癌に市川らのⅡa⁶⁾，村上らのⅡc⁷⁾ほか多数の報告がみられるが，ごく最近では胃生検を併用して術前に胃癌と診断した4mmのⅡaを高木が²⁾，4mmのⅡbを大井ら⁸⁾が報告し，どうやら微小胃癌の診断も肉眼ぎりぎりの線までせまってきたようである．

　著者らもX線内視鏡を併用して，しばしば小胃癌の診断限界について報告⁹⁾¹⁰⁾してきたが，1cm以下の微小胃癌となると，なにぶんにも多数の症例を持ち合わせていないため，今まで報告した症例と重複していること，また肉眼的に計測のむずかしいものについては切片上で計測し直したため，幾分数値に訂正のあることをお断りしておきたい（表1）．