文献詳細
文献概要
今月の主題 大腸鋸歯状病変の取り扱い 序説
大腸鋸歯状病変の取り扱い
著者: 菅井有1
所属機関: 1岩手医科大学医学部病理診断学講座
ページ範囲:P.1633 - P.1634
文献購入ページに移動 本特集のタイトルは“大腸鋸歯状病変の取り扱い”である.本誌では過去にも鋸歯状病変の企画をしたことがあるが,今回の企画は“取り扱い”に関するものである.“取り扱い”と言えば“何かの扱い方”の語感が強いが,本特集がそのような狭い意味に限定したものではないことはもちろんのことである.本特集の企画の真意は,大腸鋸歯状病変を臨床の現場で扱う場合に当然知っておくべき知見を現在の最高水準のレベルで読者に提供することであるので,単なる“how to”ものなどではないことは当然である.
本特集では内視鏡診断はもちろん病理学的診断や分子機序における現時点での最新知見を示すが,加えて最近のトピックス,特にinverted SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)や鋸歯状病変の左右差などについても述べられている.特に後者については鋸歯状病変の取り扱いに関して重要な知見を示唆するものである.大腸癌研究会プロジェクト研究で提案されたSSA/Pの特徴的組織像は,①陰窩の拡張像,②陰窩の異常分岐像,③腺底部の異常拡張・走行異常である1)2)が,筆者はこれまでこれらの組み合わせが右側と左側では異なっている可能性を指摘してきた.本特集ではそれについて組織像のみならず,分子異常の観点からも両者の違いを基礎づける所見が提示されている3).もしこのことが妥当であるとすれば,左側と右側のSSA/Pの治療に対する考え方が従来とは異なったものになる可能性がある(内視鏡所見も右側と左側では異なったものになると思われる).
本特集では内視鏡診断はもちろん病理学的診断や分子機序における現時点での最新知見を示すが,加えて最近のトピックス,特にinverted SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)や鋸歯状病変の左右差などについても述べられている.特に後者については鋸歯状病変の取り扱いに関して重要な知見を示唆するものである.大腸癌研究会プロジェクト研究で提案されたSSA/Pの特徴的組織像は,①陰窩の拡張像,②陰窩の異常分岐像,③腺底部の異常拡張・走行異常である1)2)が,筆者はこれまでこれらの組み合わせが右側と左側では異なっている可能性を指摘してきた.本特集ではそれについて組織像のみならず,分子異常の観点からも両者の違いを基礎づける所見が提示されている3).もしこのことが妥当であるとすれば,左側と右側のSSA/Pの治療に対する考え方が従来とは異なったものになる可能性がある(内視鏡所見も右側と左側では異なったものになると思われる).
参考文献
1)八尾隆史,菅井有,岩下明徳,他.大腸SSA/Pの病理組織学的特徴と診断基準─大腸癌研究会プロジェクト研究から.胃と腸 46:442-448, 2011
2)菅井有,山野泰穂,木村友昭,他.腸管─鋸歯状病変.病理と臨 28(臨増):144-147, 2010
3)永塚真,菅井有,荒川典之,他.発生部位に基づいた大腸鋸歯状病変の臨床病理学的および分子病理学的検討.胃と腸 50:1709-1722, 2015
4)Gonzalo DH, Lai KK, Shadrach B, et al. Gene expression profiling of serrated polyps identifies annexin A10 as a marker of a sessile serrated adenoma/polyp. Pathol 230:420-429, 2013
5)Leggett B, Whitehall V. Role of the serrated pathway in colorectal cancer pathogenesis. Gastroenterology 138:2088-2100, 2010
6)Pai RK, Jayachandran P, Koong AC, et al. BRAF-mutated, microsatellite-stable adenocarcinoma of the proximal colon:an aggressive adenocarcinoma with poor survival, mucinous differentiation, and adverse morphologic features. Am J Surg Pathol 36:744-752, 2012
7)Kimura T, Yamamoto E, Yamano HO, et al. A novel pit pattern identifies the precursor of colorectal cancer derived from sessile serrated adenoma. Am J Gastroenterol 107:460-469, 2012
掲載誌情報