文献詳細
今月の主題 大腸鋸歯状病変の取り扱い
主題症例
文献概要
要旨●患者は60歳代,男性.2012年12月の大腸内視鏡検査で,盲腸底部に径20mm大の扁平隆起性病変を認めた.拡大観察では,開II型と伸II型があり,SSA/P由来の腫瘍と思われた.4か月後の再検で,病変中央部に陥凹面を認め,NBI観察では,surface patternは保たれていたが,病変辺縁に通常より口径の太い血管を認め,pit patternは一部VI型軽度不整を疑う所見も認めた.生検でGroup 4であり,内視鏡治療困難な部位のため,手術が施行された.径20×18mm,中分化型腺癌,pSM 800μm,INFβ,ly2,v0,No.202(+)であった.病変の局在が原因で手術となったが,結果としてリンパ節転移まで来しており,SSA/P由来の癌の進展速度が急速である可能性が示唆された症例と考えられた.
参考文献
1)藤井隆広,藤盛孝博.鋸歯状病変の癌化を考えるうえで過形成性ポリープ(HP)からいわゆるSessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)は分ける必要があるか?─臨床の立場から(内視鏡診断からHPとSSA/Pを分けるポイント).武藤徹一郎(監),藤盛孝博(編).大腸癌取扱い規約 病理診断上の問題点.大腸疾患now2010特別号,日本メディカルセンター,pp171-180, 2010
2)原岡誠司,岩下明徳,太田敦子.大腸鋸歯状病変の発生と発育進展─鋸歯状腺腫とか形成性ポリープの癌化.胃と腸 42:288-298, 2007
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