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文献詳細

雑誌文献

胃と腸50巻4号

2015年04月発行

文献概要

今月の主題 早期大腸癌内視鏡治療後の中・長期経過 主題

切除断端の病理学的評価からみた早期大腸癌内視鏡治療後の中・長期経過─大腸癌研究会プロジェクト研究より

著者: 上杉憲幸1 松田尚久2 九嶋亮治3 安藤正夫4 田中信治5 味岡洋一6 新井冨生7 本間清明8 山野泰穂9 八尾隆史10 松本主之11 藤盛孝博12 杉原健一13 菅井有1

所属機関: 1岩手医科大学医学部病理診断学講座 2国立がん研究センター中央病院内視鏡科 3滋賀医科大学医学部臨床検査医学講座 4金上仁友会金上病院内科 5広島大学病院内視鏡診療科 6新潟大学大学院医歯学総合研究科分子・診断病理学分野 7東京都健康長寿医療センター病理診断科 8日本海総合病院内視鏡内科 9秋田赤十字病院消化器病センター 10順天堂大学医学部人体病理病態学 11岩手医科大学医学部内科学講座消化器内科消化管分野 12神鋼病院病理診断センター 13光仁会第一病院

ページ範囲:P.437 - P.447

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要旨●目的:大腸内視鏡切除標本においては種々の問題点が指摘されている.本研究では大腸内視鏡切除材料において,1)側方断端における腫瘍組織の残存と残存腸管の遺残・再発との関連性と,2)深部断端と癌組織における断端距離と遺残・再発との関連性について検討を行った.加えて内視鏡切除後再発例の再発までの期間についても検討した.対象と方法:内視鏡的に切除された肉眼型Is,IIa型およびLST型腫瘍を対象とした.1)側方断端:内視鏡切除後に6か月以上の転帰が確認可能で,側方断端が陽性であった腺腫および粘膜内癌81例を対象とした.側方断端の臨床病理学的所見と遺残・再発の有無との関連性について検討した.2)深部断端:内視鏡切除後に追加治療が施行された,もしくは6か月以上の転帰が確認可能な粘膜下層浸潤癌194例を対象とした.対象症例の癌浸潤の先進部から深部断端までの距離を測定し,遺残・再発の有無との関連性について検討を加えた.結果:側方断端陽性例においては,再発を認めた症例は5例(6.2%)であった.深部断端陽性例は22例(11.3%)であったが,再発を来した症例はなかった.深部断端対象症例においては再発を認めた症例は1例(0.6%)のみで,深部断端までの距離は350μmであった.考察:側方断端陽性症例では,断端成分における腫瘍組織の組織学的差異にかかわらず,一定の頻度で遺残・再発が生じることが明らかとなった.粘膜下層浸潤癌において,深部断端までの距離が500μmを超える症例では再発の危険性が低く,安全な断端距離であることが示唆された.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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