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文献詳細

雑誌文献

胃と腸50巻4号

2015年04月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

胃底腺型胃癌の1例

著者: 大廽あゆみ 宮﨑慎一1 森田照美1 上萬恵1 甲斐弦1 小西哲生2 森將晏3 八尾隆史4 三富弘之5 日高康博46

所属機関: 1鳥取生協病院消化器内科 2鳥取生協病院放射線科 3鳥取生協病院病理部 4順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学 5獨協医科大学病理学(人体分子) 6順天堂大学医学部消化器内科

ページ範囲:P.457 - P.465

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要旨●患者は72歳,男性.市の胃がん内視鏡検診で胃穹窿部大彎前壁寄りに2cm大の発赤調隆起性病変を認めたため,精査・加療目的で当科へ紹介され受診となった.NBI(narrow band imaging)拡大観察では,表面構造・血管構造に癌を疑う所見は認められなかった.生検診断は高分化腺癌で,癌は粘膜層の中層から粘膜下層にかけて存在していた.切除標本では,主細胞に類似し,核異型性に富む細胞が不整な腺管を形成して,粘膜層の中層から粘膜下層を中心として増殖していた.腫瘍細胞は免疫組織学的にMUC6とpepsinogen Iに広範囲で陽性,H/K-ATPaseは一部で陽性であり,主細胞優位型の胃底腺型胃癌と診断した.Ki-67標識率は最大で30%と高値であった.癌として否定的な意見もある「胃底腺型胃癌」において,その存在を強く肯定する貴重な症例であると考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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