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文献概要
増刊号 早期消化管癌の深達度診断 2015 序説
消化管癌の通常内視鏡観察による深達度診断
著者: 八尾恒良1
所属機関: 1佐田病院
ページ範囲:P.481 - P.484
文献購入ページに移動 通常内視鏡観察による深達度診断について,胃癌を中心に,私見を述べる.
現在の深達度診断能を,ESD(endoscopic submucosal dissection)切除標本の病理診断レベルに近付けるには,以下の取り組みが必要であろう.
(1)深達度診断には,見つけ出し診断や性状診断,範囲診断とは次元の異なる観察方法,考え方が必要である.ESD治療の可能性がある病変を発見したら,NBI(narrow band imaging)拡大観察終了後,もう一度,深達度診断のための観察を行う心構えが必要である.
(2)臨床的立場からは現在の“ESD適応条件”には問題が多い.ESDの手技が向上し,多数のESD症例が蓄積された現在,診断に資する要因をもとに深達度診断ではなくESD適応条件の診断学の再構築が望まれる.
現在の深達度診断能を,ESD(endoscopic submucosal dissection)切除標本の病理診断レベルに近付けるには,以下の取り組みが必要であろう.
(1)深達度診断には,見つけ出し診断や性状診断,範囲診断とは次元の異なる観察方法,考え方が必要である.ESD治療の可能性がある病変を発見したら,NBI(narrow band imaging)拡大観察終了後,もう一度,深達度診断のための観察を行う心構えが必要である.
(2)臨床的立場からは現在の“ESD適応条件”には問題が多い.ESDの手技が向上し,多数のESD症例が蓄積された現在,診断に資する要因をもとに深達度診断ではなくESD適応条件の診断学の再構築が望まれる.
参考文献
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