icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸50巻7号

2015年06月発行

文献概要

今月の主題 診断困難な炎症性腸疾患 主題

炎症性腸疾患の病理診断における診断困難の原因

著者: 八尾隆史1 平橋美奈子2

所属機関: 1順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学 2九州大学大学院医学研究院保健学部門・医学部保健学科

ページ範囲:P.877 - P.884

文献購入ページに移動
要旨●炎症性腸疾患の生検診断では,特異的あるいは特徴的所見を示すものについては診断可能な場合もあるが,診断困難なことも多い.その原因として,生検組織は病変のごく一部であり,粘膜と粘膜下層表層部しか観察できないという物理的な理由がまず挙げられる.さらに,(1)それぞれの疾患に特異的または特徴的所見を認識していないか見逃した場合,(2)異なる疾患で類似した像を示す場合,(3)変化が軽度あるいは病勢が衰えたため特徴的所見を示さない場合などが診断困難例として想定される.生検診断の有効活用には,病理医のみならず臨床医もその有用性と限界を理解しておくことが重要である.そして,臨床医は想定される疾患を念頭に置き,その診断に有用な組織像を得ることが期待できるような適切な部位から生検組織を採取する必要がある.炎症性腸疾患は,肉眼像あるいはX線造影像,内視鏡像により全体像を把握し,さらには患者の全身状態や治療歴を加味したうえで,病理組織学的所見も加えて鑑別診断を行うことが基本であるが,種々の理由で分類困難な場合は時相の違いによる病勢の変化をみるため,経過観察にならざるをえない場合も存在する.

参考文献

1)八尾隆史,飯原久仁子.炎症性腸疾患の病理診断.胃と腸 48:601-610, 2013
2)松原亜季子,九嶋亮治,柿木里枝,他.比較的稀あるいは今後注目すべき炎症性疾患 Collagenous colitis─日本人症例の特徴.病理と臨 26:823-832, 2008
3)田中政則.大腸の炎症性疾患─生検診断のアルゴリズム.病理と臨 26:781-794, 2008
4)池田圭祐,岩下明徳.大腸炎症性疾患の病理診断─肉芽腫の鑑別を中心に.病理と臨 26:795-802, 2008
5)八尾隆史,蔵原晃一,大城由美,他.非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)起因性腸病変の臨床病理学的特徴と病態.胃と腸 42:1691-1699, 2007
6)Washington K, Stenzel TT, Buckley RH, et al. Gastrointestinal pathology in patients with common variable immunodeficiency and X-lined agammaglobulinemia. Am J Surg Pathol 20:1240-1252, 1996
7)佐々木達,落合利彰,原田直彦,他.多発大腸潰瘍を認めた分類不能型免疫不全症の1例.胃と腸 38:573-577, 2003
8)八尾隆史,平橋美奈子,河野真二,他.特発性腸間膜静脈硬化症の病理からみた鑑別診断.胃と腸 44:153-161, 2009
9)Oya M, Yao T, Tsuneyoshi M. Chronic irradiation enteritis:its correlation with the elapsed time interval and morphological changes. Hum Pathol 27:774-81, 1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?