文献詳細
今月の主題 胃がん検診に未来はあるのか
序説
対策型検診と任意型検診における胃X線,内視鏡,血清学的検査の位置づけと問題点
著者: 細川治1 渡邊透1 佐藤広隆2 真田治人3
所属機関: 1横浜栄共済病院外科 2横浜栄共済病院消化器内科 3横浜栄共済病院健康医学センター
ページ範囲:P.991 - P.994
文献概要
刺激的なタイトルに誘われて,本誌を手にとった読者もおられることと思う.胃がん検診はわが国のがん検診の先駆けとして1960年代に開始された.この時期,国際的にみても他臓器を含めてがん検診は実施されておらず,“世界初”というパイオニア的な意味合いを有していた.二重造影という優れた技術が開発され,早期胃癌分類が提唱され,それらが普及し始めていたことにより胃がん検診は全国に拡大することに成功した.しかし,わが国と同程度かそれ以上に胃癌有病率が高い中南米や東アジア諸国にX線造影検査を用いた胃がん検診が広まることはなく,いわゆる「ガラパゴス化」はここでも起こっている.乳癌,大腸癌,子宮頸癌などのように死亡率減少のエビデンスを有するがん検診においては欧米諸国の受診率はわが国よりはるかに高く,がん検診すべてが後塵を拝している状況であり,発展途上国並みと蔑まれても仕方がない.ここにきて,胃がん検診が将来的に継続するか否かに関して疑問が投げかけられている.第一にはX線造影検査というスクリーニング手法に関する問題であり,今ひとつは若年者におけるHelicobacter pylori(H. pylori)感染率の低下である.
参考文献
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