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文献詳細

雑誌文献

胃と腸50巻8号

2015年07月発行

文献概要

今月の主題 胃がん検診に未来はあるのか 主題

胃X線検診の現状と展望─任意型検診の立場から

著者: 中島寛隆1 尾割道代1 山㟢琢士1 渡海義隆1 天野由紀1 長浜隆司2 榊信廣1 吉田操1

所属機関: 1公益財団法人早期胃癌検診協会 2千葉徳洲会病院消化器内科内視鏡センター

ページ範囲:P.1021 - P.1029

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要旨●胃X線検診の画像精度と検診受診歴の検討結果をもとに,その現状と展望を考察した.当院の胃X線検診から発見された81病変について,検診X線像での描出率と臨床病理学的所見を遡及的に検討すると,良好に描出される胃癌は最大腫瘍径が2cm以上,もしくは,深達度では粘膜下層より深部の病変であることが明らかになった.また発見胃癌を過去の受診歴から逐年検診群と初回検診群に二分すると,逐年検診群での早期癌率が比較的高い傾向がみられた.これらの結果から胃X線検診は救命可能な粘膜下層癌の拾い上げができる画像精度を有している点と,逐年検診が初回X線検査で見逃した癌に対するセーフティーネットの役目と同時に,早期癌発見率の向上に寄与することが推測された.一方で,胃癌罹患率の低下が進む若年者に対してこれまで通りの検診プログラムではその有効性を保つことが難しくなってきている.若年者の胃がん検診には,胃癌発生のkey factorであるHelicobacter pyloriの感染状況を踏まえて胃癌の高リスク群を設定し,そのうえで画像診断法を組み合わせることが必要と考えられた.

参考文献

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12)国立がん研究センターがん予防・検診研究センター(編).対象年齢の検討.有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版.pp 23-24, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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