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文献詳細

雑誌文献

胃と腸50巻9号

2015年08月発行

文献概要

今月の主題 食道胃接合部腺癌 主題

食道胃接合部腺癌のX線診断─X線造影検査の診断能と限界について

著者: 小野陽一郎1 長浜孝1 八尾建史2 石川智士1 別府孝浩1 平井郁仁1 松井敏幸1 山本聡3 三上公治3 前川隆文3 田邉寛4 太田敦子4 池田圭祐4 原岡誠司4 岩下明德4 高木靖寛5

所属機関: 1福岡大学筑紫病院消化器内科 2福岡大学筑紫病院内視鏡部 3福岡大学筑紫病院外科 4福岡大学筑紫病院病理部 5芦屋中央病院消化器科

ページ範囲:P.1129 - P.1140

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要旨●対象27例のX線造影像と切除標本の病理組織学所見を遡及的に見直し,食道胃接合部腺癌におけるX線造影検査の浸潤範囲診断能および深達度診断能を検討した.浸潤範囲診断能は66.7%(18/27例)であり,診断不成功例は,浸潤境界部に平坦な病変を随伴した病変が多く,食道胃接合部腺癌においても平坦病変に対するX線診断は限界となりうることが示唆された.側面像における陰影欠損のみをSM2以深の指標とした深達度診断は,感度57.1%(4/7例),特異度85.0%(17/20例),正診率77.8%(21/27例)であった.浅読み例の病理組織学所見は,いずれもSM垂直浸潤距離が短く,SM小浸潤は診断限界と考えられた.深読み症例は全例不十分な壁伸展による偽SM所見が誤診の要因であった.食道胃接合部腺癌のX線診断においては,閉鎖期,半閉鎖期の所見を加味して診断することが重要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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