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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸51巻1号

2016年01月発行

雑誌目次

今月の主題 慢性胃炎を見直す 序説

慢性胃炎の歴史

著者: 春間賢

ページ範囲:P.7 - P.14

はじめに
 胃炎は臨床経過から急性胃炎と慢性胃炎に分類されるが,一般に胃炎というと慢性胃炎を意味する.急性胃炎は急激な心窩部痛,吐き気,嘔吐,時に吐・下血で発症し,上部消化管内視鏡検査で凝血塊の付着した多発性のびらん,あるいは浅い潰瘍を認めることが特徴的所見である.一方,慢性胃炎は,本邦の日常診療では明確な診断基準がなく用いられており,大きく分けて,心窩部痛,胃もたれ,吐き気などの上部消化器症状を訴える患者に診療上の病名として(症候性胃炎),胃X線造影検査や内視鏡検査でびらんや萎縮などの異常所見を認めた場合に形態学的病名として(形態学的胃炎),胃生検組織や切除胃で病理組織学的に診断する病理組織学的診断として(組織学的胃炎),の3つの意味で用いられてきた.形態学的胃炎や組織学的胃炎は必ずしも自覚症状を起こすものでなく,また,組織学的胃炎の多くはHelicobacter pylori(H. pylori)感染が原因であることが明らかになり,漫然として用いられてきた慢性胃炎の診断名は,本来の,病理組織学的に確定診断された場合に限って用いるようになってきた.
 一方,消化性潰瘍や胃癌など症状の原因となる器質的疾患を認めないが心窩部を中心とした消化器症状を訴えるものに対しては欧米において機能性ディスペプシア(functional dyspepsia ; FD)という病名が提唱されており,本邦でも保険診療上の病名として確立されつつある.一方,主に内視鏡所見で診断する形態学的胃炎は,これまでの確立されてきた臨床研究を継承し,胃癌や消化性潰瘍の発生母地として,さらにH. pyloriの発見後は,H. pylori感染を内視鏡的に診断する方法として重要になった.

主題

胃炎の病理診断

著者: 九嶋亮治

ページ範囲:P.15 - P.25

要旨●胃炎の診断と分類は剖検胃や切除胃を用いた病理組織学的研究に始まる長い歴史がある.H. pyloriの発見以来,特に本邦ではH. pylori感染が胃炎の主たる原因と考えられるようになった.基本的に胃炎は病期から急性胃炎と慢性胃炎に,原因論的にA型胃炎,B型胃炎,C型胃炎などに分類されてきた.updated Sydney systemでは慢性胃炎を萎縮性胃炎(atrophic gastritis)と非萎縮性胃炎(non-atrophic gastritis)に分類する.拡大観察や画像強調など内視鏡機器や診断技術が発展し,胃炎診断は複雑化してきたようにみえる.胃炎の中には,H. pylori感染とは関係のない胃炎も数多く存在するし,最近は除菌後胃炎という概念も注目されている.本稿では,胃炎の京都分類と胃炎についての京都国際コンセンサス会議の結果も踏まえて,臨床医や病理医らが知っておくべき胃炎の病理組織学的特徴を簡潔に提示したい.

慢性胃炎のX線造影像の検討

著者: 入口陽介 ,   小田丈二 ,   水谷勝 ,   高柳聡 ,   冨野泰弘 ,   山里哲郎 ,   藤田直哉 ,   岸大輔 ,   大村秀俊 ,   板橋浩一 ,   神谷綾子 ,   清水孝悦 ,   橋本真紀子 ,   山村彰彦 ,   細井董三

ページ範囲:P.26 - P.41

要旨●当センターで経験した胃癌を,Helicobacter pylori(H. pylori)未感染,現感染(中等度萎縮,高度萎縮),除菌後に分類し,背景胃粘膜のX線造影所見について検討した.X線造影像では,H. pylori未感染は表面平滑で,現感染・除菌後は粗大顆粒〜微細顆粒のX線造影所見が認められ,その組織像は萎縮の程度と領域によって異なり,慢性炎症による経時的な粘膜変化であった.病理組織像では,胃体部の粗大顆粒は慢性炎症細胞浸潤による腺窩の配列の乱れや過形成,前庭部の顆粒は萎縮と腺窩の延長や隆起型の腸上皮化生,胃体部小彎の顆粒は萎縮と幽門腺化生,除菌後では胃体部の萎縮性の腸上皮化生と腺窩の過形成,再生を認めた.胃X線造影像では,胃全体像から萎縮度を診断し,その中の領域性を考慮すれば病理組織学的所見に一致する診断を得ることは可能であり,H. pylori未感染例のX線造影診断能は極めて高率であった.

胃炎の内視鏡診断─通常光観察

著者: 加藤元嗣 ,   小野尚子 ,   中川学 ,   中川宗一 ,   安孫子怜史 ,   宮本秀一 ,   水島健 ,   津田桃子 ,   大野正芳 ,   大西俊介 ,   清水勇一 ,   坂本直哉 ,   間部克裕

ページ範囲:P.42 - P.51

要旨●組織学的所見と内視鏡所見が一致しないために,慢性胃炎はこれまで組織学的に診断されてきた.しかし,最近の内視鏡機器の進歩により,組織学的胃炎と一致する内視鏡所見が次第に明らかになった.胃粘膜におけるH. pylori感染状態は,H. pylori未感染,H. pylori感染,H. pylori既感染・除菌後に分けることができる.新たな内視鏡による胃炎分類である京都分類では,19の胃炎所見を定義して,H. pylori感染状態との関連性を整理した.RAC,びまん性発赤,地図状発赤は,それぞれH. pylori未感染,H. pylori感染,H. pylori除菌後の特徴的な所見である.H. pylori感染状態によって,発生胃癌のリスクや特徴は異なるため,胃炎の診断は胃癌スクリーニングにおいても重要である.

慢性胃炎の拡大内視鏡診断─OLGA・OLGIM分類に基づいた胃癌リスク分類を含めて

著者: 名和田義高 ,   八木一芳 ,   田中恵 ,   中村厚夫 ,   坂暁子

ページ範囲:P.52 - P.63

要旨●筆者らはH. pylori未感染胃の胃粘膜をもとにH. pyloriによる慢性萎縮性胃炎の拡大像の変化をA-B分類として報告してきた.正常胃底腺粘膜では密な円形開口部が観察され,H. pyloriによる炎症の過程で開口部は形を変化させ,萎縮粘膜に至ると溝状の胃小溝が出現し,管状模様となる.しかし,除菌成功などによってH. pylori陰性化すると,胃底腺粘膜では再度ピンホール状の円形開口部が観察されるようになる.このように拡大内視鏡観察で腺窩上皮の構造を観察することで,粘膜固有層の腺の状態を診断することが可能である.この視点から欧州で普及しているOLGA・OLGIM分類をoptical biopsyでstagingする試みを行った.慢性胃炎の拡大内視鏡診断の最先端を紹介する.

胃炎の臨床診断─血清診断

著者: 井上和彦 ,   鎌田智有 ,   塚本真知 ,   眞部紀明 ,   山下直人 ,   楠裕明 ,   本多啓介 ,   串山義則 ,   畠二郎 ,   塩谷昭子 ,   春間賢

ページ範囲:P.64 - P.71

要旨●血清ペプシノゲン(PG)値は胃粘膜の萎縮のみならず炎症も反映する.従来PG法として胃癌高危険群である萎縮の判定法として用いられることがほとんどであったが,今後はPG実測値に注目することも望まれる.血清H. pylori抗体,内視鏡所見,病理組織学的所見のすべてでH. pylori未感染の正常胃粘膜と判断した当院受診者のPG Iは43.7±14.7ng/ml,PG IIは8.6±3.4ng/ml,PG I/II比は5.4±1.3,血清ガストリンは64.3±28.4pg/mlであった.人間ドック受診者を対象としたPG値によるH. pylori感染診断精度に関するROCでは,PG IIとPG I/II比のAUCはそれぞれ0.942,0.958と高く,有用であると考えられた.そして,最良のカットオフ値はPG IIでは11.4ng/ml,PG I/II比では4.4であった.血清PG値という簡便な血清マーカーで胃粘膜状態を把握できることは胃癌スクリーニングのみならず,プライマリ・ケアをはじめとする消化器診療に有用と思われる.

鳥肌胃炎の内視鏡所見

著者: 大澤元保 ,   鎌田智有 ,   春間賢 ,   井上和彦 ,   石井学 ,   村尾高久 ,   藤田穣 ,   松本啓志 ,   眞部紀明 ,   楠裕明 ,   畠二郎 ,   塩谷昭子

ページ範囲:P.72 - P.75

要旨●鳥肌胃炎の内視鏡所見の特徴は大きさが均一な結節状隆起が前庭部から胃角部を中心にほぼ均等に分布し,その所見はインジゴカルミン色素撒布にてより明瞭となり,拡大観察にて隆起の中心には陥凹した白色斑点が認められることである.この白色斑点は鳥肌胃炎の内視鏡診断には必須の所見であり,病理組織学的には粘膜表層に位置するリンパ濾胞の増生である.鳥肌胃炎は通常,前庭部から胃角部に観察されることが多いが,時に胃体部から噴門部にまで認められることもある.さらに,鳥肌胃炎は除菌によりその結節状隆起は経時的に消失し,やがて萎縮粘膜へと変化する.

A型胃炎の診断

著者: 丸山保彦 ,   景岡正信 ,   大畠昭彦 ,   寺井智宏 ,   志村輝幸 ,   金子雅直 ,   山本晃大 ,   甲田賢治 ,   花岡明宏 ,   鈴木直之

ページ範囲:P.77 - P.86

要旨●A型胃炎は胃体部を中心とする逆萎縮を特徴とする自己免疫性胃炎である.逆萎縮の診断には幽門輪近くまで入念に観察し,萎縮を免れている粘膜が存在しないかを意識する必要がある.本症は血清学的に高ガストリン血症を呈し,抗胃壁細胞抗体,抗内因子抗体が陽性になる.悪性貧血はA型胃炎の終末像であり,経過中には鉄欠乏性貧血,1型糖尿病,自己免疫性甲状腺疾患を合併することがある.しばしば過形成性ポリープや,時に神経内分泌腫瘍,胃癌などを合併するが,進行度によりさまざまな内視鏡所見を取りうる.ABCリスク検診でペプシノーゲン法陽性,H. pylori菌抗体陰性のD群から発見される症例も今後増えてくると思われる.

残胃炎

著者: 野村幸世 ,   春間賢

ページ範囲:P.87 - P.93

要旨●残胃炎の原因はH. pylori感染の持続と十二指腸液の逆流と,その両者の混合がある.内視鏡的胃炎所見によりその原因を同定することは困難である.十二指腸液逆流による残胃炎では,内視鏡的所見に比較し,臨床的症状や組織学的炎症は軽度であることが多い.しかし,残胃吻合部には残胃癌ができることがあり,十二指腸液逆流により発癌しうることがわかった.H. pyloriの陽性率は再建法により異なり,十二指腸液逆流が多い再建法ではH. pyloriの陽性率が低下する.昨今,十二指腸液逆流に配慮した再建術式が増えてきている.目指す方向としては,十二指腸液逆流を防止する再建術式を行ったうえで,さらに残胃炎に対しH. pylori除菌を行うことである.

主題研究

分離腺管を用いた腸上皮化生,非腸上皮化生および胃癌の分子病理学的解析

著者: 杉本亮 ,   上杉憲幸 ,   荒川典之 ,   永塚真 ,   肥田圭介 ,   石田和之 ,   佐々木章 ,   松本主之 ,   菅井有

ページ範囲:P.95 - P.104

要旨●腸上皮化生の分子異常を明らかにするために,分離腸上皮化生腺管,分離非腸上皮化生腺管,癌分離腺管を用いてDNAメチル化解析を行った.対象は胃癌27例から得られた腸上皮化生腺管と同一粘膜から得られた非腸上皮化生腺管,胃体部大彎から採取された非腸上皮化生腺管と分離胃癌腺管13例を用いた.メチル化解析は2パネル法を用い,HME(high methylation epigenome),IME(intermediate methylation epigenome),LME(low methylation epigenome)に分類した.さらに,分離腺管を採取した粘膜の腸上皮化生粘膜を,粘液形質の観点から完全型(CD10陽性)優位,不完全型(MUC5AC陽性)優位に分類した.腸上皮化生腺管のIMEの頻度は,同一粘膜内の非腸上皮化生腺管のそれより高かった.癌腺管のメチル化はHMEもみられたが,多くはIMEであった.MiR-34b/cのメチル化は腸上皮化生腺管(癌非腸上皮化生腺管)>同一粘膜内の非腸上皮化生腺管>胃体部非腸上皮化生腺管の順に高かった.加えて,不完全腸上皮化生優位粘膜のほうが完全腸上皮化生優位型よりIMEの頻度が高かった.メチル化の蓄積が腸上皮化生腺管の発生に重要な役割を担っている可能性が示唆された.

Helicobacter heilmannii-like organism(HHLO)関連胃炎

著者: 沖山葉子 ,   松澤賢治 ,   勝山努 ,   樋口雅隆 ,   中島恒夫 ,   丸山和敏 ,   松本竹久 ,   太田浩良 ,   岩谷勇吾 ,   赤松泰次

ページ範囲:P.105 - P.115

要旨●HHLOと総称される,大型でらせん型を呈するHelicobacter属菌は人獣共通感染症のひとつであり,ヒト胃粘膜に感染した場合は軽度の胃粘膜障害が認められることが多い.しかし,近年鳥肌胃炎や胃MALTリンパ腫との関連が示唆され注目されている.自験例での感染率は0.1%と他の先進国と同程度であり,またHHLO関連胃MALTリンパ腫6症例に対して除菌治療を施行したところ,追加放射線治療を行った症例も含め全例寛解を維持している.H. pyloriに比べて日常診療の場で症例に遭遇する確率は低いが,臨床上注意すべき感染症であり,疑わしい場合には慎重な存在診断を行うとともに必要に応じて治療を検討すべきと考える.今後培養法の確立や分子生物学的手法を用いた解析や分類により,その実態がさらに明らかになるものと期待される.

早期胃癌研究会症例

盲腸に発生した神経節細胞腫の1例

著者: 吉井新二 ,   間部克裕 ,   藤田昌宏 ,   丹羽美香子 ,   松本美櫻 ,   羽場真 ,   川本泰之 ,   横山朗子 ,   赤倉伸亮 ,   高桑康成 ,   佐藤昌明 ,   佐藤利宏

ページ範囲:P.117 - P.123

要旨●患者は50歳代,男性.便潜血反応陽性のため大腸内視鏡を施行した.盲腸に表面平滑な隆起性病変を認めた.色素撒布像で隆起の周辺に無名溝が消失した領域があり,その境界は不明瞭であった.NBI拡大観察で隆起頂部には深部から表層に向かって走行する拡張・蛇行した血管が観察された.クリスタルバイオレット染色像で同部位はI型pitが観察され,窩間部は開大しており,上皮下腫瘍と考えられた.確定診断を目的としてprecutting EMRを施行した.病理組織学的には主に粘膜固有層内に紡錘形細胞が増殖し,またその中に神経節細胞の混在もみられ,神経節細胞腫と診断された.上皮下腫瘍の形態を呈した神経節細胞腫の1例を経験したので,その内視鏡検査所見を検討し,報告する.

特異な形態を呈した十二指腸GISTの1例

著者: 佐野村誠 ,   佐々木有一 ,   横濱桂介 ,   原美紀 ,   金泉美紗 ,   上田康裕 ,   由上博喜 ,   江頭由太郎 ,   廣瀬善信 ,   西谷仁 ,   樋口和秀

ページ範囲:P.125 - P.133

要旨●患者は70歳代,男性.発熱を主訴に,多発性肝腫瘍と十二指腸腫瘍の精査目的で当院へ入院となった.十二指腸球部後面に3.5cm大の粘膜下腫瘍様の隆起を認め,12mm大の辺縁がsharpな深掘れ潰瘍,腫瘍の露出した結節など,多彩な潰瘍形成と結節を伴う特異な肉眼形態を呈していた.また,腫瘍の管外発育を示唆する周囲の壁外性圧排像もみられた.生検病理組織にてGISTと診断され,十二指腸GISTの多発性肝転移,肝・膵直接浸潤の状態であり,イマチニブ(400mg/day)にて治療を行った.

今月の症例

Helicobacter pylori陰性胃に発生した早期胃癌の1例

著者: 田沼徳真 ,   市原真 ,   篠原敏也 ,   野村昌史

ページ範囲:P.3 - P.6

患者
 50歳代,男性.
主訴
 なし.
既往歴
 特記事項なし.
現病歴
 健診の上部消化管内視鏡検査にて胃病変を指摘され,精査加療目的に当院へ紹介され受診となった.

早期胃癌研究会

2014年12月の例会から

著者: 蔵原晃一 ,   平澤大

ページ範囲:P.135 - P.139

 2014年12月度の早期胃癌研究会は12月17日(水)に笹川記念会館2F国際会議場で開催された.司会は蔵原晃一(松山赤十字病院胃腸センター)と平澤大(仙台市医療センター仙台オープン病院消化器内科),病理は伴慎一(埼玉県済生会川口総合病院病理診断科)が担当した.また,画像診断教育レクチャーは根本哲生(東邦大学医療センター大森病院病理診断科)が「臨床医が知っておくべき病理 第2弾 食道:正常と炎症性疾患」と題して行った.

2015年2月の例会から

著者: 岩男泰 ,   高木靖寛

ページ範囲:P.140 - P.143

 2015年2月の早期胃癌研究会は2015年2月18日(水)に笹川記念会館2F国際会議場で開催された.司会は岩男泰(慶應義塾大学医学部予防医療センター),高木靖寛(芦屋中央病院消化器科),病理は新井冨生(東京都健康長寿医療センター病理診断科)が担当した.また,画像診断教育レクチャーは,立石陽子(横浜市立大学医学部病態病理学)が「臨床医が知っておくべき病理 第2弾 食道:腫瘍性病変」と題して行った.

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欧文目次

ページ範囲:P.2 - P.2

「今月の症例」症例募集

ページ範囲:P.63 - P.63

学会・研究会ご案内

ページ範囲:P.144 - P.148

次号予告

ページ範囲:P.150 - P.150

編集後記

著者: 赤松泰次

ページ範囲:P.151 - P.151

 慢性胃炎という疾患名は,序説にも書かれているように極めてあいまいな疾患概念で,従来,患者の自覚症状によって用いる「症候性胃炎」,胃X線や胃内視鏡の所見として用いる「形態学的胃炎」,病理組織学的所見として用いる「組織学的胃炎」に大別される.Helicobacter pylori(H. pylori)の発見とその後の研究によって,われわれが「形態学的胃炎」あるいは「組織学的胃炎」と考えている病変の多くはH. pylori感染が原因であることに異論を唱える人はいないであろう.かつて「胃炎については何も“いえん”」という駄洒落を言った消化器病の大御所がいたが,当時に比べると「慢性胃炎」の疾患概念は近年かなり整理されてきたと思われる.
 本特集では,序説で胃炎の診断や分類に関するこれまでの歴史が詳細に述べられている.続いて主題論文として,慢性胃炎の病理診断,X線診断,内視鏡診断(通常光,拡大),血清診断がH. pylori関連性慢性胃炎を中心に掲載されている.さらに特殊な慢性胃炎として,鳥肌胃炎,A型胃炎,残胃炎,HHLO(Helicobacter heilmannii-like organism)関連性胃炎の診断や臨床的意義などが解説されている.

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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