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文献詳細

雑誌文献

胃と腸51巻12号

2016年11月発行

早期胃癌研究会症例

NBI併用拡大観察が有用であったBrunner腺由来の十二指腸癌の1例

著者: 原田英1 蔵原晃一1 大城由美2 八板弘樹1 長末智寛1 久能宜昭1 亀田昌司1 田中貴英1 岩崎一秀1 浦岡正義3 渕上忠彦1

所属機関: 1松山赤十字病院胃腸センター 2松山赤十字病院病理診断科 3浦岡胃腸クリニック

ページ範囲:P.1617 - P.1625

文献概要

要旨●患者は60歳代,男性.上部消化管内視鏡検査で,十二指腸球部に,頂部に陥凹を伴う径約10mm大の粘膜下腫瘍様隆起を認めた.NBI併用拡大観察では,陥凹面内部に腺管構造の消失と微小血管の異常を認め,陥凹周囲の病変表面には胃腺窩上皮パターンの領域を認めた.超音波内視鏡検査で病変は第2層を中心に内部に囊胞を伴うやや低エコー領域として描出され,第3層は保たれていた.粘膜内にとどまる悪性病変と考え,診断的治療目的でESDを施行した.病理組織学的に病変内部に高度異型腺管の増生を認め,周囲にBrunner腺腫や過形成への移行がみられたため,Brunner腺より発生し粘膜下腫瘍様の形態を示したBrunner腺由来の十二指腸癌と診断した.病変の表面には,陥凹に一致して癌の露出を認め,その周囲の病変表層にMUC5AC陽性の胃腺窩上皮化生領域を認めた.近年,Brunner腺過形成や過誤腫の病変表層に胃腺窩上皮が多くみられることが報告されているが,本例では癌が露出した陥凹面周囲の病変表層に胃腺窩上皮化生の領域を認めた.本例の術前診断において,NBI併用拡大観察は陥凹面の評価と胃腺窩上皮化生の存在診断に有用であった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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