文献詳細
今月の主題 狭窄を来す小腸疾患の診断
主題症例
文献概要
症例
患者は70歳代,男性.慢性腎不全で外来透析中であった.黒色便と倦怠感が出現し,1か月間でHb 12.5g/dlからHb 3.6g/dlへの貧血の進行があり,精査のため当科に紹介となった.上部消化管および下部消化管内視鏡検査で出血源を認めなかったため,カプセル内視鏡検査を行った.その結果,下部小腸に全周性潰瘍とカプセル内視鏡の接触による活動性出血を認めた.小腸X線造影検査では回盲弁より約50cm口側の回腸に急性期の所見1)と考えられる拇指圧痕像を呈する6cmにわたる管状狭小化を認めた(❶,❷).小腸内視鏡検査では,比較的境界明瞭な浅い帯状や全周性の潰瘍を呈する腸管の狭小化を認めた(❸,❹).虚血性小腸炎と診断し保存的加療を行ったが,出血による輸血を繰り返したため小腸部分切除を施行した.切除小腸の肉眼像では出血を伴う,境界明瞭な帯状から地図状の潰瘍を認めた(❺).病理所見も潰瘍底は血管に富む肉芽組織で被覆され(❻),粘膜下層には軽度〜中等度の線維化(❼),担鉄細胞の出現も確認(ベルリンブルー染色)され(❽),虚血性病変に矛盾しない病理組織像2)であった.
患者は70歳代,男性.慢性腎不全で外来透析中であった.黒色便と倦怠感が出現し,1か月間でHb 12.5g/dlからHb 3.6g/dlへの貧血の進行があり,精査のため当科に紹介となった.上部消化管および下部消化管内視鏡検査で出血源を認めなかったため,カプセル内視鏡検査を行った.その結果,下部小腸に全周性潰瘍とカプセル内視鏡の接触による活動性出血を認めた.小腸X線造影検査では回盲弁より約50cm口側の回腸に急性期の所見1)と考えられる拇指圧痕像を呈する6cmにわたる管状狭小化を認めた(❶,❷).小腸内視鏡検査では,比較的境界明瞭な浅い帯状や全周性の潰瘍を呈する腸管の狭小化を認めた(❸,❹).虚血性小腸炎と診断し保存的加療を行ったが,出血による輸血を繰り返したため小腸部分切除を施行した.切除小腸の肉眼像では出血を伴う,境界明瞭な帯状から地図状の潰瘍を認めた(❺).病理所見も潰瘍底は血管に富む肉芽組織で被覆され(❻),粘膜下層には軽度〜中等度の線維化(❼),担鉄細胞の出現も確認(ベルリンブルー染色)され(❽),虚血性病変に矛盾しない病理組織像2)であった.
参考文献
1)梅野淳嗣,江﨑幹宏,前畠裕司,他.虚血性小腸炎の臨床像.胃と腸 48:1704-1761, 2013
2)池田圭祐,岩下明德,田邉寛,他.小腸潰瘍の病理診断─非腫瘍性疾患を中心に.胃と腸 49:1258-1266, 2014
3)飯田三雄,岩下明德,松井敏幸,他.虚血性小腸炎15例の臨床像およびX線像の分析.胃と腸 25:523-535, 1990
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