胃と腸51巻2号

2016年02月発行

今月の主題 まれな食道疾患の鑑別診断

主題　隆起を主体とする非上皮性病変の特徴と鑑別

著者： 門馬久美子¹ 藤原純子¹ 立石陽子² 鈴木邦士³ 宮本昌武³ 三浦昭順³ 加藤剛³ 堀口慎一郎⁴ 比島恒和⁴ 吉田操⁵

所属機関： ¹がん・感染症センター都立駒込病院内視鏡科 ²横浜市立大学医学部病態病理学 ³がん・感染症センター都立駒込病院食道外科 ⁴がん・感染症センター都立駒込病院病理科 ⁵早期胃癌検診協会

ページ範囲：P.174 - P.189

文献概要

要旨●隆起を主体とする非上皮性病変の多くは良性疾患である．2009〜2015年の7年間に，EUSあるいは組織学的に診断しえた自験非上皮性病変は39例であり，内訳は，平滑筋腫25例〔64.1％（含，扁平上皮癌合併3例，異型上皮合併1例）〕，顆粒細胞腫6例（15.4％），GISTと神経鞘腫，脂肪腫が各2例（5.1％），リンパ管腫と血管腫が各1例（2.6％）であった．非上皮性腫瘍発見時は，存在部位，大きさ，形状，色調，硬さ，表面性状，陥凹や潰瘍形成の有無，可動性などを観察し，隆起の形状，硬さ，色調，存在部位などを参考に鑑別診断を行う．しかし，GIST，平滑筋腫，神経鞘腫の鑑別には，免疫組織化学的検査が必要であり，KIT陽性ならGIST，KIT陰性でデスミン陽性なら平滑筋腫，KIT陰性でS-100蛋白陽性なら神経鞘腫である．大きさ，表面性状，陥凹や潰瘍形成の有無は，悪性疾患との鑑別に重要な要素であり，大きさ3cm以上，表面不整で陥凹や潰瘍を有する，あるいは，急速に増大してくるものは，悪性の可能性が高いため，速やかに質的診断を行い，治療戦略を立てる．

参考文献

1）有馬美和子，多田正弘，田中洋一，他．消化管の平滑筋性腫瘍，神経性腫瘍，GISTの診断と治療─食道．胃と腸 39:539-551, 2004

2）GIST研究会．GIST診断・治療（2003年）. http://www.gist.jp/shindan/index2003.html（最終アクセス日2016年1月14日）

3）幕内博康，島田英雄，千野修，他．まれな食道良性腫瘍および腫瘍様病変の分類と頻度．胃と腸 43:255-266, 2008

4）田久保海誉．良性非上皮性腫瘍．食道の病理，2版．総合医学社，pp 99-115, 1996

5）島津久明，小堀鴎一郎，団野誠，他．食道平滑筋腫と平滑筋肉腫─自験9例の報告と本邦文献上報告例の分析．日外会誌 84:355-368, 1983

6）太田正穂，中村努，小熊英俊，他．食道神経鞘腫の1例．胃と腸 43:349-354, 2008

7）森田一郎，虫明寛行，篠崎洋二，他．悪性所見を伴う食道粘膜下神経鞘腫の1治験例─本邦報告例の検討．外科 58:506-510, 1996

8）Miettinen M, Majidi M, Lasota J. Pathology and diagnostic criteria of gastrointestinal stromal tumors（GISTs）：a review. Eur J Cancer 38:39-51, 2002

9）金内直樹，佐藤徹，安孫子正美，他．後縦隔腫瘍と術前診断した食道原発巨大GISTの1手術例．日呼外会誌 14:82-87, 2000

10）高木靖寛，岩下明徳，山田豊，他．消化管顆粒細胞腫の診断と治療．胃と腸 39:628-639, 2004

11）古賀秀樹，清水香代子，垂水研一，他．消化管脈管系腫瘍（血管腫・リンパ管腫）の診断と治療．胃と腸 39:612-627, 2004

12）門馬久美子，吉田操，加藤久人，他．食道リンパ管腫．日本食道疾患研究会（編）．食道疾患レアケース・アトラス．医学書院，pp 22-25, 1999

13）平田一郎，梅垣英次，林勝吉，他．消化管脂肪腫の診断と治療．胃と腸 39:601-611, 2004

14）川久保博文，大森泰，杉浦仁．内視鏡的粘膜切除術を施行した食道血管腫の1例．胃と腸 43:344-348, 2008

15）新井俊文，門馬久美子，川田研郎，他．食道に発生したpyogenic granulomaの1例．胃と腸 41:983-989, 2006

16）梅原靖彦，大久保忠俊，木村泰三．食道fibrovascular polyp．日本食道疾患研究会（編）．食道疾患レアケース・アトラス．医学書院，pp 46-49, 1999

17）蒲池紫乃，岩下明徳，吉田道夫，他．食道の炎症性線維状ポリープ（inflammatory fibroid polyp）の1例．胃と腸 43:327-332, 2008