icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸51巻3号

2016年03月発行

文献概要

今月の主題 知っておきたいまれな大腸悪性腫瘍 主題症例

転移性腫瘍(乳癌)

著者: 堀本義哉12 荒川敦3 八尾隆史3 齊藤光江1

所属機関: 1順天堂大学医学部乳腺・内分泌外科学 2順天堂大学医学部病理・腫瘍学 3順天堂大学医学部人体病理病態学

ページ範囲:P.362 - P.365

文献購入ページに移動
疫学
 再発乳癌の剖検例では30%程度で消化管・腹膜播種が認められるが,生存中に症状が出て顕在化し,それらの転移が把握される頻度は数%程度と考えられる.2006〜2014年までの間に,当科で経験した術後再発乳癌のうち,臨床情報を検索しえた154例について初再発部位に注目すると,頻度の高い臓器は順に,骨46%(71例),肺および胸膜38%(58例),肝28%(43例)であり,消化管転移と判断された例は4%(6例)であった.全体の無病生存期間(disease-free survival ; DFS)が中央値29か月,全生存期間(overall survival ; OS)が中央値55か月であったのに対して,消化管初発転移の症例はDFS中央値53か月,OS中央値70か月と再発までの期間が長い傾向が認められた.
 乳癌の組織型は約90%を占める乳管癌と,小葉癌をはじめとするその他の10%に分けられるが,この小葉癌はE-カドヘリンが欠失し細胞間接着が特に弱いことを特徴としており,比較的消化管に転移しやすいことが知られている.しかし,再発のリスクが小葉癌で特に高いわけではなく,また小葉癌の転移先はあくまで乳管癌と同様に骨などの主要臓器が主体であり,消化管に必ず転移するわけではない.したがって,乳房原発巣手術時に将来の消化管転移を予測することは極めて困難である.一般的に年齢や閉経の有無などを含めたその他の臨床病理学的因子と消化管転移の関連は明らかではない.

参考文献

1)Merino MJ, Livolsi VA. Signet ring carcinoma of the female breast:a clinicopathologic analysis of 24 cases. Cancer 48:1830-1837, 1981
2)Winston CB, Hadar O, Teitcher JB et al. Metastatic lobular carcinoma of the breast:patterns of spread in the chest, abdomen, and pelvis on CT. AJR Am J Roentgenol 175:795-800, 2000
3)Chu PG , Weiss LM. Immunohistochemical characterization of signet-ring cell carcinomas of the stomach, breast, and colon. Am J Clin Pathol 121:884-892, 2004
4)Tot T. The role of cytokeratins 20 and 7 and estrogen receptor analysis in separation of metastatic lobular carcinoma of the breast and metastatic signet ring cell carcinoma of the gastrointestinal tract. APMIS 108:467-472, 2000
5)Bhargava R, Beriwal S, Dabbs DJ. Mammaglobin vs GCDFP-15. Am J Clin Pathol 127:103-113, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?