拡大内視鏡による胃癌の組織型の診断─分化型癌
著者:
金光高雄
,
八尾建史
,
長濱孝
,
今村健太郎
,
久原研二郎
,
小島俊樹
,
高橋晴彦
,
藤原昌子
,
小野陽一郎
,
松井敏幸
,
中馬健太
,
田邉寛
,
岩下明德
,
大津健聖
ページ範囲:P.615 - P.620
要旨●胃の乳頭腺癌は管状腺癌に比べて生物学的悪性度が高く,浸潤に伴い低分化腺癌に移行するとの報告もある.両者の区別は臨床的に意義あることと考えられるが,従来の通常内視鏡検査では困難とされてきた.筆者らはNBI併用拡大内視鏡観察において,円形の腺窩辺縁上皮で囲まれた円形の窩間部上皮下の間質に血管が存在する特徴的な所見を“VEC(vessels within epithelial circle)pattern”と呼称し,乳頭腺癌に特徴的な所見であると報告した.福岡大学筑紫病院でESDを施行された395例を対象とし,VEC pattern陽性胃癌とVEC pattern陰性胃癌について,病理組織学的に比較検討した.組織学的な乳頭状構造の頻度は,VEC pattern陽性群において94.3%,VEC pattern陰性群で8.6%であった.NBI併用拡大内視鏡検査で捉えたVEC patternの存在は,組織学的乳頭状構造の存在と非常に強い相関を認めた(p<0.001).また,VEC pattern陽性群は陰性群より統計学的有意差を持って高頻度に未分化型癌を混在し(p=0.002),粘膜下層浸潤を認めた(p=0.045).以上の結果より,NBI併用拡大内視鏡検査を用いて病変内全体を観察し,VEC patternを優勢に認める場合は乳頭腺癌,VEC patternを認めなければ管状腺癌と診断する指標となりうると考えられた.また,VEC pattern陽性の胃癌については,未分化型癌の混在や粘膜下層に浸潤の可能性を念頭に置くべきである.