胃と腸51巻5号

2016年05月発行

増刊号 消化管拡大内視鏡診断2016 主題 大腸

大腸腺腫，腺癌を除く大腸腫瘍および腫瘍様病変の拡大内視鏡診断

著者： 堀田欣一¹ 今井健一郎¹ 伊藤紗代¹ 川田登¹ 田中雅樹¹ 角嶋直美¹ 滝沢耕平¹ 石渡裕俊¹ 松林宏行¹ 山口裕一郎¹ 小野裕之¹

所属機関： ¹静岡県立静岡がんセンター内視鏡科

ページ範囲：P.701 - P.710

要旨●大腸の腺腫および腺癌との鑑別が問題となる病変に遭遇することはまれではない．鑑別診断において，患者背景，基礎疾患，局在などの情報に加えて，通常内視鏡診断による，形態，大きさ，表面性状などの情報が重要である．色素拡大内視鏡検査や画像強調内視鏡検査の所見を加味すると，さらに診断精度を高められる可能性がある．本稿では比較的遭遇する頻度の高い有茎性〜亜有茎性ポリープ（若年性ポリープ，Peutz-Jeghers型ポリープ，炎症性ポリープ，炎症性筋腺管ポリープ）の鑑別診断と，形態が類似しており鑑別が問題となる，カルチノイド腫瘍，良性リンパ濾胞性ポリープ，MALTリンパ腫などの粘膜下腫瘍様隆起性病変の鑑別を中心に解説する．

参考文献

1）久部高司．若年性ポリープ．消内視鏡 26：1988-1989, 2014

2）久部高司，青見賢明，長浜孝，他．過誤腫性病変─内視鏡診断の立場から．胃と腸 48：1118-1128, 2013

3）大倉康男．過誤腫性大腸ポリープ─病理診断の立場から．胃と腸 48：1129-1139, 2013

4）齋藤武，飯野正敏，堀江弘．下行結腸に巨大な単発性Peutz-Jeghers型ポリープを認めた1小児例．日小外会誌 36：317-323, 2000

5）山口直之，磯本一，宿輪三郎，他．過誤腫性ポリポーシスの拡大観察．胃と腸 45：2093-2100, 2010

6）佐田美和，五十嵐正広，吉澤繁，他．非腫瘍性大腸ポリープの臨床での取り扱い．早期大腸癌 6：443-448, 2002

7）清水誠治，石田英和，富岡秀夫，他．炎症性ポリープ─内視鏡の立場から．胃と腸 48：1140-1148, 2013

8）松下弘雄，山野泰穂，今井靖，他．非腫瘍性病変に対する拡大内視鏡によるアプローチ．早期大腸癌 6：449-458, 2002

9）中村眞一，菅井有，上杉憲幸，他．炎症性筋腺管ポリープ．早期大腸癌 6：428-429, 2002

10）藤野靖久，折居正之，中村眞一，他．大腸inflammatory myoglandular polypの5例．Gastroenterol Endosc 43：1281-1286, 2001

11）斉藤祐輔，岩下昭徳，飯田三雄．大腸カルチノイド腫瘍の全国集計─大腸カルチノイド腫瘍の治療指針．胃と腸 40：200-213, 2005

12）Sugimoto S, Hotta K, Shimoda T, et al. The Ki-67 labeling index and lymphatic/venous permeation predict the metastatic potential of rectal neuroendocrine tumors. Surg Endosc 2015 Dec. 30.［Epub ahead of print］

13）宮﨑慎一，野田裕之，森田照美，他．内視鏡的に切除した直腸良性リンパ濾胞性ポリープの1例．鳥取医誌 36：23-29, 2008

14）中村昌太郎，松本主之，池上幸治，他．小腸・大腸MALTリンパ腫の診断と治療．胃と腸 49：635-647, 2014

15）堀田欣一，藤井隆広，松田尚久．拡大内視鏡診断のA to Z─悪性リンパ腫-MALTリンパ腫を中心に．早期大腸癌 10：455-458, 2006

16）久部高司，菊池陽介，和田陽子，他．大腸MALTリンパ腫に対する抗生剤投与療法─自験例5例と文献報告例のまとめ．胃と腸 41：345-355, 2006