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今月の主題 Helicobacter pylori除菌後発見胃癌の内視鏡的特徴 序説
除菌後発見胃癌の形態学的特徴を検討する意義─従来の胃癌とどこが異なるのか?
著者: 八木一芳1
所属機関: 1新潟県立吉田病院内科
ページ範囲:P.739 - P.741
文献購入ページに移動“除菌後胃癌”が近年,学会や研究会で取り上げられるようになった.それは“除菌後の胃癌発生は抑制されると期待していたにもかかわらず発生してくる胃癌はどのような癌なのか?”という探究心からと思う.しかし,この“除菌後胃癌”には“除菌後に新たに発生した胃癌”と“除菌前にも存在していたが除菌後に発見された胃癌”が含まれている.除菌が行われるようになってからの年月を考えると,現時点で診断されている“除菌後胃癌”は後者が大部分と考えられるが,それぞれの症例についてどちらなのかを正確に決定するのは不可能に近い.そして,“除菌後胃癌”は“除菌後に新たに発生した胃癌”と考える読者も多いと思われる.それらの実情を考慮して,本特集では“発生の除菌前後を問わず,発見が除菌後である胃癌”を検討するという意味で“除菌後発見胃癌”という言葉を採用した.
それでは,胃癌が発生してから除菌が行われると,胃癌の内視鏡像は変化するのであろうか.また,病理組織像も従来の胃癌とは異なるのであろうか.本特集の目的はその点を明らかにすることである.大部分の胃癌はH. pylori(Helicobacter pylori)感染による炎症の中で発生し発育する炎症癌である1).除菌でH. pyloriが陰性化した時点で炎症は消退する.既に潜在癌や見逃し癌が存在していた場合,それらの癌は炎症という環境の中で発育・進展していたが,炎症が消失することによって以前とは異なる環境の中で発育・進展することになる2).その変化の影響を受けることは十分考えうる.そして癌を取り巻く非癌腺管や癌と非癌腺管の相互関係にも変化が生ずるであろう.
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