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文献概要
今月の主題 消化管結核の診断と治療─最近の進歩 主題
本邦における消化管結核の現況─近年の本邦報告例の解析
著者: 小林広幸1
所属機関: 1福岡山王病院消化器内科
ページ範囲:P.145 - P.156
文献購入ページに移動要旨●近年21年間(1995〜2015年)の本邦の消化管結核報告583例を収集し,主に腸結核の臨床像について過去の八尾集計(1985〜1994年)との時代的変遷も含め,その臨床像について解析した.その結果,罹患部位は八尾集計同様に大腸,回盲部,小腸の順に高率であったが,近年では大腸の報告は減少し小腸結核報告が増加しており,高齢発症者の割合が増加していた.消化管結核の補助診断法はツベルクリン反応からIGRAへ移行してきており,CT画像診断の普及などにより肺結核診断能が向上し,近年では原発性腸結核は3割程度にまで減少してきていた.一方,今日においても腸結核の確定診断は容易ではなく,通過障害や穿孔による手術例が半数以上認められ,今後はバイオ製剤に伴う腸結核発症にも注意が必要である.最後に,腸以外の消化管(食道,胃,肛門)結核の特徴についても言及した.今回の解析から,今日においても腸結核のX線・内視鏡による画像診断の重要性に変わりはないことが検証された.
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