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文献詳細

雑誌文献

胃と腸52巻2号

2017年02月発行

文献概要

今月の主題 消化管結核の診断と治療─最近の進歩 主題

消化管結核の病理診断

著者: 田邉寛1 岩下明德1 池田圭祐1 太田敦子2 八尾恒良3 鶴田修4

所属機関: 1福岡大学筑紫病院病理部 2福岡大学筑紫病院臨床検査部 3佐田病院 4久留米大学病院消化器病センター

ページ範囲:P.181 - P.189

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要旨●消化管結核は難治性潰瘍性病変の鑑別診断として必ず挙げられる疾患で,迅速な対応,治療を行うためには各臓器でのその特徴を把握しておくことが重要である.確定診断には乾酪性肉芽腫や結核菌の検出が必須だが,生検のみで両者を確認するのは比較的困難である.活動性病変ではCrohn病との鑑別が特に重要で,潰瘍の走行や形態,肉芽腫の大きさや形態に加え,血液検査やツベルクリン反応,そして肛門部病変の有無などの臨床的所見と総合し,両者の鑑別がなされるべきである.典型的な乾酪性肉芽腫や結核菌が検出されなくても,大型で癒合性のある非乾酪性肉芽腫はCrohn病との鑑別に有用である.腸結核では輪状潰瘍の他に,病理組織学的におそらく粘膜筋板の上下を主座とした多数の潰瘍や瘢痕,それらの周囲の粘膜下層を中心とした炎症が治癒して生じたと推測される線維化が観察される.これにより生じたKerckring皺襞の不規則な走行や途絶,消失が萎縮瘢痕帯の一部として認識されると推察される.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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