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雑誌文献

胃と腸52巻2号

2017年02月発行

文献概要

今月の主題 消化管結核の診断と治療─最近の進歩 主題

消化管結核の治療と合併症

著者: 大川清孝1 青木哲哉1 上田渉1 大庭宏子1 宮野正人1 小野洋嗣1 藤井英樹1 山口誓子1 倉井修1 末包剛久2 佐野弘治2 西口幸雄3 福島裕子4 井上健4

所属機関: 1大阪市立十三市民病院消化器内科  2大阪市立総合医療センター消化器内科 3大阪市立総合医療センター消化器外科 4大阪市立総合医療センター病理診断科

ページ範囲:P.202 - P.213

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要旨●本稿では腸結核の治療と合併症について主に述べるが,最近,生物学的製剤(Bio)投与中の炎症性腸疾患の結核併発が問題になっており,まずそれについて述べる.潜在性結核感染症がある場合は,Bio開始3週間前よりイソニアジドを少なくとも6〜9か月間投与する必要がある.また,Bio投与中に結核が発症した場合は,原則Bioは中止するが,継続すべき場合もみられる.腸結核の治療については,肺結核と同様に抗結核薬4剤投与で始めるのが原則である.肺結核に比べて腸結核では菌が検出できないことも多く,診断的治療を行わなければならないことも比較的多い.肺結核の効果判定は菌の消失で行うが,腸結核では内視鏡検査による潰瘍の観察で行う.判定時期は明らかな根拠はないが,2か月後が適当と筆者は考える.腸結核の合併症については,抗結核薬治療中の穿孔と腸閉塞が特に問題であり,あらかじめ患者に説明しておくことが重要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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