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文献詳細

雑誌文献

胃と腸52巻2号

2017年02月発行

文献概要

今月の主題 消化管結核の診断と治療─最近の進歩 主題症例

全身性リンパ節腫大を伴った胃結核の1例

著者: 八板弘樹1 蔵原晃一1 大城由美2 濱口直彦3 森下寿文14 河内修司15 渕上忠彦1

所属機関: 1松山赤十字病院胃腸センター  2松山赤十字病院病理診断科 3松山赤十字病院呼吸器センター 4九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 5国家公務員共済組合連合会千早病院内科

ページ範囲:P.217 - P.224

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要旨●患者は60歳代,男性.検診の胃X線検査で異常を指摘され,当科外来を受診した.上部消化管内視鏡検査では胃体上部後壁にひだ集中を伴う不整形な陥凹性病変を認めた.CT検査では肺に異常は認めなかったが,縦隔,両側肺門,上腹部および両腋窩,鼠径部のリンパ節が多数腫大していた.胃の陥凹内部からの生検組織に乾酪性類上皮細胞肉芽腫がみられ,Ziehl-Neelsen染色にて抗酸菌を認めた.また,生検組織の抗酸菌培養とPCR法で結核菌が同定され,胃結核と確定診断した.胃液・喀痰の抗酸菌培養と気管支洗浄液の抗酸菌培養が陰性であり,肺結核の合併はないと判断した.鼠径リンパ節生検では抗酸菌感染を示唆する肉芽腫の形成はみられなかったが,臨床像,血液検査所見,末梢血液像,骨髄像より,胃結核に伴う結核性リンパ節炎と診断した.抗結核薬の投与を行い,胃病変,全身リンパ節腫大は共に改善した.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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