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文献詳細

雑誌文献

胃と腸52巻4号

2017年04月発行

文献概要

今月の主題 消化管内分泌細胞腫瘍の新知見 主題症例

特徴的な内視鏡所見を呈し,ESD+CRTが奏効した表在型食道内分泌細胞癌の1例

著者: 小山恒男1 高橋亜紀子1 宮田佳典2 依光展和1 塩澤哲3

所属機関: 1佐久総合病院佐久医療センター内視鏡内科 2佐久総合病院腫瘍内科 3佐久総合病院病理診断科

ページ範囲:P.461 - P.468

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要旨●患者は60歳代,男性.切歯から30cmの右壁に,発赤調の軟らかいSMT様隆起を認め,最表層は非腫瘍性上皮で覆われていた.NBI拡大観察にて血管はほとんど認識されず,EUSでは粘膜下層を主座とする軟らかいhyper-echoic lesionであった.生検にてNEC(neuroendocrine cell carcinoma)と診断された.CT,EUSにて明らかなリンパ節転移は認められず,T1b,N0,M0,Stage Iと診断し,ESD+化学放射線療法(CRT)が選択された.ESD当日の内視鏡検査にて,先端透明フードを押しつけて上皮を伸展させて拡大観察したところ,太い緑色の血管から分岐する細かな血管網を認め,WLI拡大にて粘膜固有層にAVA様の構造が観察された.
 最終診断はneuroendocrine carcinoma,T1b-SM2(2,000μm),ly1,v0,HM0,VM0,0-I type,10×10mmであった.ESD後に再度,造影CT検査を施行したところ,106 rec Rの腫大を認めエトポシド,シスプラチン療法と放射線照射の同時併用療法を施行した.4年経過し,CRが継続している.
 本例は食道NECの初期像を捉えたこと.NBI拡大内視鏡検査で特徴的な血管異形を認めたこと,R0のESDを組織学的に証明しえたこと,短期間にリンパ節転移を来したが,CRTにて長期生存が得られた,という臨床的意義があり,貴重な症例と考え報告した.

参考文献

1)Oyama T, Inoue H, Arima M, et al. Prediction of the invasion depth of superficial squamous cell carcinoma based on microvessel morphology:magnifying endoscopic classification of the Japan Esophageal Society. Esophagus doi:10.1007/s10388-016-0527-7, 2016
2)小山恒男.日本食道学会拡大内視鏡分類.胃と腸 49:148-152, 2014
3)日本肺癌学会(編).肺癌診療ガイドライン,2016年版.金原出版,2016
4)Tachimori Y, Ozawa S, Numasaki H, et al. Comprehensive registry of esophageal cancer in Japan, 2009. Esophagus 13:110-137, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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