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増刊号 図説「胃と腸」所見用語集2017 解剖・組織
胃の解剖用語(anatomical terminology of stomach)
著者: 二村聡1
所属機関: 1福岡大学医学部病理学講座
ページ範囲:P.531 - P.534
文献購入ページに移動1.一般的事項
1)形状と位置と肉眼解剖学的名称
胃(stomach)は,消化管のうち,食道と十二指腸との間を成すJ字形の袋状器官である.機能的には嚥下物を一時的に貯めて,その間,塩酸やペプシンなどを含む胃液により半液状食物(び粥)とし,これを少量ずつ十二指腸に送り出している.胃は,腹腔の左上部に位置し,左上後の胃底(穹窿部)から胃体そして幽門部(前庭部)へと右下前方へ進むにつれ狭くなり,その形と拡がりは内容量,体位,胃壁の緊張などによって変化する.成人胃の解剖学名称は,解剖学者と臨床家の間で用いる術語が多少異なる.これには,本質的な見解の相違もあろうし,古くからの慣習の違いもあろう.事実,胃幽門部は,幽門洞とも前庭部とも呼称されている.なお,「胃癌取扱い規約第14版」1)では,小彎・大彎をそれぞれ三等分し,胃上部(U),胃中部(M),胃下部(L)とする三領域を提唱しているが,これらはあくまで区分であって解剖学的名称ではない.本稿では,読者の便宜をはかり,X線または内視鏡診断の際に頻用される術語を優先的に採用した(Fig. 1).前壁と後壁が小彎と大彎で連続し,内腔を囲み,噴門で食道と,幽門で十二指腸と連絡している.通常,胃の前壁の右上部は肝臓に,左上部は横隔膜に,また,後壁は膵臓に,下縁すなわち大彎は横行結腸に,胃底は脾臓に接している.
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