文献詳細
増刊号 図説「胃と腸」所見用語集2017
画像所見〔腸〕
回盲弁開大(ileocecal valve incompetence)
著者: 三上栄1 清水誠治2
所属機関: 1神戸市立医療センター西市民病院消化器内科 2大阪鉄道病院消化器内科
ページ範囲:P.657 - P.657
文献概要
“回盲弁”は回腸末端と盲腸との間に位置する弁状の構造物で,回腸末端の粘膜,粘膜下組織,および筋層が盲腸内腔へ入り込み,盲腸内で反転して上唇と下唇を形成し,結腸の内容物が回腸に逆流するのを防ぐ役割をしている1).その回盲弁が開大する代表的な疾患としては腸結核が挙げられる.腸結核は,感染の進展がリンパの流れに沿って起こり,感染に伴い粘膜表面に近いリンパ濾胞に結核結節が形成され濾胞外へと拡がる.最終的にそれが粘膜表面に露出し,潰瘍が形成される.そのため病変はリンパ装置の多い回盲部に好発する.腸結核に特徴的な画像所見としては,回腸末端から右側結腸にみられる多発性の不整形潰瘍,輪状・帯状潰瘍などの活動性病変と萎縮瘢痕帯や治癒過程の潰瘍病変との混在がみられる.それらが慢性的に繰り返され,粘膜のひきつれや変形が起こることで偽憩室を形成したり,回盲弁が開大したりすると考えられる2)(Fig. 1,2).
参考文献
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