胃と腸52巻5号

2017年05月発行

増刊号 図説「胃と腸」所見用語集2017 画像所見〔全消化管〕

discrete ulcer

著者： 亀田昌司¹ 蔵原晃一¹

所属機関： ¹松山赤十字病院胃腸センター

ページ範囲：P.673 - P.673

定義
　腸炎（小腸炎・大腸炎）は，その肉眼所見から，びまん性炎症を伴う腸炎とdiscrete ulcerから成る腸炎に分類される^1）．discrete ulcerとは，ほぼ正常にみえる粘膜（normal-appearing intestinal mucosa）に周囲を取り囲まれた開放性潰瘍を言い，潰瘍自体の形態は問われないため原因疾患ごとに類円形，縦走，輪状潰瘍などさまざまな形態を呈する．discrete ulcerから成る腸炎の場合，多発性，非連続性に分布する多発性潰瘍の介在粘膜は発赤・浮腫を欠き，血管透見像もほぼ正常に観察される．

参考文献

1）長廻紘．小腸・大腸病変の鑑別診断．腸管の炎症性疾患．胃と腸ハンドブック．「胃と腸」編集委員会（編）．医学書院，pp 420-427, 1992

2）池田圭祐，岩下明德，田邉寛，他．血管炎による消化管病変の病理診断．胃と腸 50：1353-1362, 2015

3）清水誠治，渡邉元樹，富岡秀夫，他．炎症性腸疾患と鑑別困難な感染性腸炎の診断と経過─Crohn病との鑑別を中心に．胃と腸 41：951-958, 2006

4）蔵原晃一，松本主之，川崎啓祐，他．NSAID起因性大腸病変．胃と腸 46：956-958, 2011

5）河内修司，蔵原晃一，川崎啓祐，他．ダブルバルーン小腸内視鏡にて病変を観察しえた非特異性多発性小腸潰瘍症の1例．胃と腸 49：1318-1325, 2014

6）田中貴英，蔵原晃一，南満芳，他．膠原病・血管炎の消化管病変と皮膚病変．胃と腸 51：1019-1030, 2016