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文献詳細

雑誌文献

胃と腸52巻5号

2017年05月発行

文献概要

増刊号 図説「胃と腸」所見用語集2017 病理

深掘れ潰瘍,下掘れ潰瘍〔deep(-mining)ulcer, undermining ulcer〕

著者: 藤原美奈子1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院形態機能病理

ページ範囲:P.678 - P.678

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定義
 潰瘍とは,組織の壊死に基づく粘膜や皮膚の一定の深さに達する組織欠損を潰瘍という1).病理学的に,組織欠損の深さにより潰瘍はUl-I〜IVまで亜分類される.Ul-III〜IVの深い潰瘍で辺縁が断崖状に切れ込んだ潰瘍を病理学的に“深掘れ潰瘍”と呼び,それを表す肉眼的所見用語として“打ち抜き潰瘍”や“punched-out ulcer”などが挙げられる(Fig. 1,2).もともと“深掘れ(ふかぼれ)”とは,“激しい流れや波浪などにより堤防の表法面(おもてのりめん,川側斜面)の土が削り取られる現象”を意味する河川用語で,その形状から,断崖状に切れ込んだ深い潰瘍を指して,この名称が生まれたと推察される.
 “下掘れ潰瘍”あるいは“下掘れ”という言葉は,腸管Behçet病や単純性潰瘍において使用頻度の高い言葉(おそらく病理学的用語)であり2)3),しばしば“深掘れ潰瘍”と混同されやすい.しかし両者は異なった形状の潰瘍を指す病理学用語として用いられるべきであり,“下掘れ潰瘍”という言葉は字の通り,“下にえぐれる潰瘍”のことで,粘膜下層を主体に組織欠損が側面方向に深くえぐれるように認められる潰瘍のことを指すべきである(Fig. 3).

参考文献

1)小池盛雄.潰瘍,びらん.胃と腸 31:416, 1996
2)高木靖寛.腸管Behçet病,単純性潰瘍.胃と腸 47:759-760, 2008
3)松本主之,飯田三雄,八尾恒良.腸型Behçet病と単純性潰瘍.飯田三雄,八尾恒良(編).小腸疾患の臨床.医学書院,pp 169-175, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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