文献詳細
増刊号 図説「胃と腸」所見用語集2017
病理
文献概要
定義
1.消化管における組織発生論の基本と形質
消化管粘膜に発生する円柱上皮系腫瘍の“形質”発現について解説する.腫瘍は発生母地の形態・機能を模倣するため,胃粘膜に発生する腫瘍は胃固有上皮に類似し“胃型”形質を,腸粘膜に発生する腫瘍は腸の上皮に類似し“腸型”形質を発現する.しかし,発生母地となる粘膜(前癌状態・病変)の形質が,炎症や化生などで正常(固有)粘膜から変化している場合,そこに発生する腫瘍の形質は前癌状態・病変のそれに類似しうるのである.つまり,“胃の腺腫や腺癌は腸上皮化生を伴う炎症を背景に発生することが多いため,腸型形質を多く発現するが,大腸の腺腫や腺癌にはそのような背景がないため,腸型(大腸型)形質を発現することが多い”という理解が基本となる.各部位の代表的病変における形質発現について簡潔に説明するが,例外も多く,同じ腫瘍内でも多様性があり,時間経過(進展)とともに変化しうる.
1.消化管における組織発生論の基本と形質
消化管粘膜に発生する円柱上皮系腫瘍の“形質”発現について解説する.腫瘍は発生母地の形態・機能を模倣するため,胃粘膜に発生する腫瘍は胃固有上皮に類似し“胃型”形質を,腸粘膜に発生する腫瘍は腸の上皮に類似し“腸型”形質を発現する.しかし,発生母地となる粘膜(前癌状態・病変)の形質が,炎症や化生などで正常(固有)粘膜から変化している場合,そこに発生する腫瘍の形質は前癌状態・病変のそれに類似しうるのである.つまり,“胃の腺腫や腺癌は腸上皮化生を伴う炎症を背景に発生することが多いため,腸型形質を多く発現するが,大腸の腺腫や腺癌にはそのような背景がないため,腸型(大腸型)形質を発現することが多い”という理解が基本となる.各部位の代表的病変における形質発現について簡潔に説明するが,例外も多く,同じ腫瘍内でも多様性があり,時間経過(進展)とともに変化しうる.
参考文献
1)九嶋亮治.胃癌─病理学的分類:日本における実践的な分類.胃と腸 52:15-26, 2017
2)Hida R, Yamamoto H, Hirahashi M, et al. Duodenal Neoplasms of Gastric Phenotype:An Immunohistochemical and Genetic Study With a Practical Approach to the Classification. Am J Surg Pathol 41:343-353, 2017
3)Tatsumi N, Kushima R, Vieth M, et al. Cytokeratin 7/20 and mucin core protein expression in ulcerative colitis-associated colorectal neoplasms. Virchows Arch 448:756-762, 2006
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