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増刊号 図説「胃と腸」所見用語集2017 病理
浸潤,偽浸潤(invasion, pseudoinvasion)
著者: 伴慎一1
所属機関: 1獨協医科大学越谷病院病理診断科
ページ範囲:P.688 - P.688
文献購入ページに移動悪性腫瘍である大腸癌(腺癌)は,粘膜組織に発生した後,粘膜下組織に侵入・増殖し,粘膜下組織への“浸潤”と呼ばれる(Fig. 1,2).一方,良性腫瘍である大腸腺腫も,その一部が粘膜下組織に侵入した所見を呈する場合があり,腺腫の“偽浸潤”と称されている1)(Fig. 3,4).偽浸潤という用語・概念は,大腸腺癌の明らかな粘膜下組織浸潤所見とは区別すべき,腺癌でない上皮性腫瘍が示す癌浸潤様所見が存在すること,粘膜下組織への腫瘍組織の侵入像が癌であることの絶対的な診断基準とはならないことを,“偽”浸潤として強調したものと理解される.S状結腸の比較的大型の有茎性病変を呈する腺腫によく認められる所見であり,蠕動運動に伴う捻転や牽引のような物理的な傷害が病変に繰り返し加わった結果,粘膜内の腫瘍組織の粘膜下への脱出を来したものと見なされている1)2).
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