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文献詳細

雑誌文献

胃と腸52巻5号

2017年05月発行

文献概要

増刊号 図説「胃と腸」所見用語集2017 病理

簇出(budding, sprouting)

著者: 海崎泰治1

所属機関: 1福井県立病院臨床病理科

ページ範囲:P.689 - P.689

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定義
 簇出(ぞくしゅつ,そうしゅつ)は組織学的な腫瘍の浸潤様式を表現する用語のひとつで,2010年の「大腸癌治療ガイドライン」1)において“癌発育先進部間質に浸潤性に存在する単個または5個未満の構成細胞から成る癌胞巣”と定義されている(Fig. 1).現在では,大腸癌内視鏡治療後の追加手術の必要性を検討するうえでの重要な病理組織学的因子であることが示されている.
 “簇出”の用語の起源は1950年代に今井2)により提唱された.癌腫の発育様式のひとつとして簇出発育型が定義され,癌胞巣先端部における蕾状芽出像または個細胞性離脱像のほか,硬性(スキルス)癌のようなびまん浸潤像までの広い所見を指し,英語表記としては“sprouting”が用いられた.その後,現在の定義とほぼ一致した所見を指す概念として,“tumor budding”が提唱され,大腸進行癌症例においてリンパ管侵襲やリンパ節転移と相関し,リンパ管侵襲よりも発見しやすい所見であることが示された.しかし,それらの研究で用いられた簇出の定義や評価方法にはあいまいな要素を含んでいたため,大腸癌研究会のプロジェクト研究3)により“簇出”の厳密な定義をしたうえで,粘膜下層浸潤癌(SM癌)におけるリンパ節転移危険因子としての臨床的意義が検討された.その結果,簇出軽度(Grade 1)群(リンパ節転移6.7%と簇出高度(Grade 2/3)群(26.9%)の比較で両者に有意な差を認め,多変量解析では簇出が独立したリンパ節転移の危険因子であることが示された.

参考文献

1)大腸癌研究会(編).大腸癌治療ガイドライン医師用2010年版.金原出版,2010
2)今井環.人体癌腫発育状況の形態学的考察.福岡医誌 45:72-102, 1954
3)河内洋,他.SM癌治療における簇出の意義.武藤徹一郎(監),杉原健一,藤盛孝博,五十嵐正広,他(編).大腸疾患NOW 2009.日本メディカルセンター,pp 127-132, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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