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文献詳細

雑誌文献

胃と腸52巻6号

2017年05月発行

今月の主題 知っておきたいまれな大腸良性疾患

序説

知っておきたいまれな大腸良性疾患

著者: 斉藤裕輔1

所属機関: 1市立旭川病院消化器病センター

ページ範囲:P.759 - P.760

文献概要

 大腸の良性疾患は腫瘍性(様)病変,広義の炎症性疾患(感染性,薬剤性,血管性,遺伝性,特発性など),機能性疾患など多様である(Table 1)1).良性疾患のみでもこれだけ多様な疾患が存在するため,すべてを記憶することは困難であろう.
 胃とは異なり,大腸においては背景粘膜が一様であるため,日常的に経験する一般的な初発の良性疾患の診断は比較的容易である.一方で,前述した病気の多様性のほかに,大腸の良性疾患の診断を困難にする要素として,直腸粘膜脱症候群,collagenous colitis,腸管スピロヘータ感染症,特発性腸間膜静脈硬化症など,時代とともに新たな疾患が発見され,疾患概念が確立されてきたことが挙げられる.これら病変においてはたとえ典型的な所見を呈していても,疾患そのものの知識がなければ診断は困難となる2).さらに,初期病変(Crohn病におけるアフタや潰瘍性大腸炎におけるリンパ濾胞性直腸炎など)や感染(潰瘍性大腸炎におけるサイトメガロウイルス感染に伴う下掘れ潰瘍など)・虚血性変化の合併(潰瘍性大腸炎における縦走潰瘍),術後の腸管(Crohn病の吻合部に生じる輪状潰瘍など),内科治療後にみられる非定型的病変など,修飾要素も加わるため,たとえ典型的な病変であっても大腸良性疾患の診断は一層困難となる3).さらには,いまだ疾患概念の確立していない原因不明の良性疾患も存在する2)ため,大腸疾患の診断はますます複雑で難解となる.ましてや,“まれな”大腸良性疾患の診断ともなると,半ばあきらめ気味,または拒否反応を示してしまう読者も多いことが危惧される.

参考文献

1)八尾恒良(監),「胃と腸」編集委員会(編).胃と腸アトラスII 下部消化管第2版.医学書院,pp 505-703, 2014
2)清水誠治,富岡秀夫,石田英和,他.診断困難な炎症性腸疾患の特徴.胃と腸 50:867-876, 2015
3)渡辺英伸,味岡洋一,太田玉紀,他.炎症性腸疾患の病理学的鑑別診断─大腸病変を中心に.胃と腸 25:659-682, 1990

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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