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文献詳細

雑誌文献

胃と腸52巻7号

2017年06月発行

今月の主題 胃潰瘍は変わったか─新しい胃潰瘍学の構築を目指して

主題症例

良性潰瘍との鑑別が問題となったびまん浸潤型胃癌の1例

著者: 赤松泰次1 下平和久2 野沢祐一2 倉石康弘2 植原啓之2

所属機関: 1長野県立須坂病院内視鏡センター 2長野県立須坂病院消化器内科

ページ範囲:P.927 - P.933

文献概要

要旨●患者は70歳代,男性.急性心筋梗塞にてステント治療を受け,その3日後から上腹部痛が出現した.初回EGDでは,胃角上部の前壁小彎に潰瘍性病変を認めた.悪性所見に乏しく,抗血栓療法施行中のため鉗子生検を行わずに終了し,PPIを投与した.6週間後の第2回EGDでは潰瘍性病変は縮小し,白苔の周囲に再生上皮がみられた.初回より12週間後の第3回EGDでは白苔は消失し,瘢痕部は全体にやや隆起し,その周囲に褪色調粘膜と不整形陥凹を認めた.また,前回まで異常を認めなかった前庭部に伸展不良がみられた.鉗子生検ではGroup 5(sig)と診断された.胃X線造影では胃の遠位側を中心とした広範な硬化像がみられ,びまん浸潤型胃癌と考えられた.外科手術を施行したが非治癒切除となった.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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